「オールA」と言ってもね


りんごっこ保育園とりんごっこ第一保育園は、第三者評価で「オールA」の評価を受けていることが自慢のようです。


■東京都の第三者評価の結果がでました!
http://www.ringokko-hoikuen.com/page004.html


「東京都の第三者評価」と書いていますが、正確には、都の制度のもとで行なわれているとはいえあくまで民間の認証評価機関による評価であることは東村山魑魅魍魎ブログが指摘するとおり。ちなみにりんごっこの第三者評価を担当したのは「社団法人 日本経営士会」なる団体ですが、「平成18年3月31日迄の認証機関」とあるように、すでに三者評価事業からは撤退したようです。


それはともかく、この「オールA」評価というのがどうも一人歩きしている気がしてならないのですね。


たとえば佐藤市議は「第三者評価としては殆ど聞いたことのない『オールA評価』を徹底的に売り物にする『りんごっこ保育園』」とブログで書いていますし、3月5日の議会でも次のように述べたそうです。

そう、オールAです。大変に素晴らしい。第三者評価制度ができてから数年たちますが、東京都の福ナビというページで探せばわかりますが、非の打ち所がないほど絶賛しているオールA評価などというものは見つからないと思います。/オールA評価は驚きに値するとともに、大変不思議なことでもあるのです。


鈴木市議も「名誉毀損判決結果に関して・・・・」と題した記事のなかで次のように書いています。

このりんごっこ保育園以外の市内の保育園でもオールAと評価されることは難しい中で、なぜ、りんごっこ保育園だけが認証も含めて同時にオールAなのか、誰が考えてもこんなことはありえないのである。裁判を想定した第3社評価のオールAは錦の御旗なのである。


ところが、とうきょう福祉ナビゲーション:福祉サービス第三者評価のサイトで「評価結果を検索する」をやってみると、「オールA」というのはそこまで珍しいものではなさそうです。


まずは平成17年度の認可保育所の評価状況を見てみましょう。平成17年度は東村山市ではりんごっこ保育園しか第三者評価を受けていないので、日野市の、しかもりんごっこと同じ(社)日本経営士会の評価を受けた保育園と比較してみました。


比較結果


ご覧のようにすべて「オールA」です(もっともこの比較表には「組織マネジメント分析結果」が含まれていないので、それも含めれば「オールA」は2園=至誠第二保育園万願寺保育園=だけになります)。


しかも日野市の保育園はいずれも「A+」と評価された項目がたくさんあり、とくに万願寺保育園は「A+」のオンパレードなのに、りんごっこ保育園だけは「A+」なし


追記:ちょっと見てみたら、至誠第二保育園と万願寺保育園は同じ法人の経営でした。至誠第二保育園は平成19年度にも別の評価機関による第三者評価を受けており、やはりA+を多数含む「オールA」の評価を得ています。しかし2つの園のサイトをざっと見るかぎり、このような高評価を売り物にするような表現は見当たらず、ましてや他園の評価結果を云々したりはしていません。こういうところに保育者の心根が表れるのですね。)


平成18年度は東村山市認可保育所が4つ、第三者評価を受けています。そちらも見てみましょう。


比較結果


「サービス分析結果」だけを見れば、「ふじみ保育園」と「つばさ保育園」が「オールA」で、それぞれ2〜3項目で「A+」の評価も受けています。もっとも「組織マネジメント分析結果」ではいずれも「B」をつけられた項目があり、全項目「オールA」の保育園が東村山市ではりんごっこだけというのは、いまのところ間違いなさそうです。


(ざっと見ただけなので間違いがあっても「パニック!」とか言わないでください。言いたい人は言ってもいいですが。)


しかし、「オールA」というのはそれほど自慢すべきことなのか。「A」とか「A+」をどのように理解すればいいのかは、「比較一覧の見方」に書いてあります。

A   は「標準項目をすべて満たした状態」
B   は「標準項目をひとつでも満たしていないものがある状態」
C   は「標準項目をひとつも満たしていない状態」
A+  は「別に定める定義に該当するA+の取り組みがある状態」

○【標準項目】とは
 東京都内の福祉サービス事業者が、福祉サービスの質の向上を図る観点から、標準的に実施していることが必要であると認められる事項、または、実施するためのしくみ(取り組み)があることが必要であると認められる事項をいいます。

○【A+の取り組み】とは
 標準項目をすべて満たした(できていることが確認済)うえで、以下の要件をすべて満たした取り組みとしています。
 ア 当該評価項目のねらいに合致していること
 イ 事業者の理念・方針に合致していること
 ウ 事業者の独自性または現状を改善するための取り組みが認められること


つまり、「オールA」だけど「A+なし」というのは、大学の「優・良・可」評価で言えば「いずれの科目も良か可で合格してるんだけど、優はひとつもない」ということで、そんなに自慢することでもないし、過大評価するようなことでもないと思うのですが。


一番みっともないのは「オールA」を売り文句にするりんごっこですが、そんな売り文句に幻惑されないようにすることも大事だと思います。