りんごっこには2匹の番犬がいるらしい


20日もシンブンにはほとんど動きがありません。「最終更新日」が修正されたのと、佐藤市議の「取り調べ」が行なわれる法廷の番号(818号法廷)が明示されただけです。ネットで検索してみると東京高等裁判所818号法廷には傍聴席が50席ほどあるようで、お手すきの方は霞が関まで足を運んでみられるといいのではないでしょうか。


一方、りんごっこ保育園問題では「東村山魑魅魍魎ブログ」の祐天寺美桜さんが更新の一時ストップを宣言しました。年度末はやっぱりお忙しいんでしょうか。けれどもそれと入れ代わるように「エアフォース」で「りんごっこ保育園問題とは何か」という連載が始まりましたから、世の中はうまくしたものです。


そのりんごっこ保育園ですが、ホームページが3月17日付で更新されていました。以前の記事でも書いたとおり、2月29日のりんごっこ保育園勝訴判決についてトップページではとくに触れられておらず、「東村山の保育は改革が必要です。」というページに「再び高い評価を裁判所からいただきました。」というコラムが追加されただけだったのですが、今回、トップページに次のような見出しが登場しています。


勝訴判決いただきました! 数多くの励ましやお祝いに感謝いたします。


リンク先は同じく「東村山の保育は改革が必要です。」のページですが、前は下にあったコラムが上のほうに置かれました。「勝訴」を強調しなければならないと思いなおしたようです。ここでも「この判決を知った全国の多くの方々から、お祝いや励ましの言葉をいただきました」というお礼の言葉が追加されていますが、この人たちにとってはたったひとりでも「多くの方々」ですから、実際にはどの程度のお祝いや励ましがあったのかは不明。まあ事情をよく知らない人たちから複数のお祝いや励ましが寄せられても不思議ではありませんが。


コラム(2月29日付)の内容は基本的には変わらないのですが、「いまだに、基準に達していないなど、事実無根をこの判決後も言ったりするなど、相変わらず、この保育園が気になってしょうがない人たちもいるようです」の太字の部分はあとから追加されたものですね。判決後のことが2月29日付のコラムに書かれているのは不思議ですが、それはともかくとして、規準違反の指摘が「事実無根」というのは本当なのでしょうか。


この点は「エアフォース」で詳しく説明されています。記事によると、りんごっこ保育園には10名の保育士が勤務していましたが、今年(2008年)1月31日付で3名の保育士と1人の栄養士が退職。認可基準によれば、定員77名の同園では最低10名の保育士を配置しなければならないので、明らかに規準違反になります。そこで東村山市保健福祉部は2月18日付で改善指導を行ないましたが、高野園長は「2月1日の時点ですでに保育士は補充している」などと主張して、改善指導を受けること自体を拒否したと言うのです。


東村山市保健福祉部は2月13日に同園を訪問し、保育士が不足している事実を確認したうえで改善指導を行なったはずですから、園側の対応は不可解です。ともあれ、実際に基準が満たされているのであれば、保護者や市民の信頼を獲得するためにも、「事実無根」で済ませるのではなく具体的な人数をホームページ等で明らかにしてはどうでしょうか。


さてこの改善指導については矢野「市議」が3月14日の市議会予算特別委員会でかみついています。朝木「市議」も熱心に野次を飛ばしていたようです(佐藤市議のブログより)。乳児保育の場合に看護師を保育士と見なすことができるか(*文末に追記あり)、2007年12月25日付の東村山市児童課長名の文書に誤りがあったのかどうかが争点になっているようですが、どっちにしても「保健福祉部の認識ではそれでも2名足りない計算になる」(エアフォース)わけですから、何のためにこんな議論を延々とやっているのか、さっぱりわかりません。上にも書いたように、実際に基準が満たされているのであれば堂々と対応し、満たされていないのであれば改善計画を提出・実行すればいいだけの話です。


ここまで書いたところで「エアフォース」に2回目の記事がアップされました(「提出資料と矛盾する高野園長の主張」)。詳しくはそちらをお読みいただけばよいとして、とても「園児第一」(上述のコラム「再び高い評価を裁判所からいただきました。」より)を標榜しているとは思えない対応です。


それにしても、3月14日の予算特別委員会の様子を読むと、矢野・朝木両「市議」の対応はもはや口利き云々のレベルを超えて「議会の私物化」ではないかとすら思えてきます。佐藤市議が指摘するように、矢野「市議」は「他の認可保育園だって会計に問題がある」ということと「改善指導は間違っている」ということを主張するために持ち時間の半分以上を費やしました。いずれも東村山市の保育を本当の意味でよりよくしていくための議論ではなく、りんごっこ保育園という特定の保育園を擁護するための議論です。


そして、矢野・朝木両「市議」は運営委員としてりんごっこ保育園の経営に深く関与している。こう考えてくれば、両「市議」は「りんごっこ保育園の番犬」としての役割を果たしていると評しても言い過ぎではないでしょう。だれかれかまわず吠えかかる番犬がいては、開かれた保育など望めそうにもありません。


3月17日の予算特別委員会について、シンブンは「さながら『犬は吠えても、歴史は進む!』っていうありさまでした」と書いています。いつものようにだれに何を伝えたいのかさっぱりわからない1行ですが、3月17日の様子はその日に質問に立った佐藤市議があらためてブログで報告してくれるでしょう。予算特別委員会の委員長を務めた鈴木市議も、ブログで「相変わらず予定を狂わしてくれる特定議員は今回の予算委員会でも大活躍であった」と皮肉交じりにコメントしており(3月19日付の記事)、報告を期待できそうです。


そういえば昨日(19日)は児童育成計画推進部会も開かれたはずですね(魑魅魍魎ブログ参照)。3月14・17日の矢野「市議」の「大活躍」には、これに対する牽制という意味合いもあったのでしょうか。どういう議論が行なわれたかは知りませんが、「犬は吠えても、歴史は進む」というのは確かに間違いなさそうです。


追記:ちなみに矢野「市議」や高野園長が言及している国の通知ですが、厚生労働省法令等データベースシステム(通知検索)の児童福祉法関連の項目には掲載されていませんでした。しかし青森県健康福祉部こどもみらい課『保育所事務ハンドブック』のII−1に抜粋が掲載されていたので、そこからさらに抜粋して紹介しておきます。職名は当時の「保母」「看護婦」等のままです。

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保育所における乳児に係る保母の配置基準の見直し等について(抜粋)
平成10年4月9日児発第305号
厚生省児童家庭局長通知

(2)保健婦又は看護婦に係る経過措置について
従来、乳児保育指定保育所の職員配置については、保母のほか、乳児9人以上を入所させる保育所にあっては保健婦又は看護婦1人を置き、乳児6人以上を入所させる保育所にあっては保健婦又は看護婦1人を置くよう努めることとされ、保健婦又は看護婦が配置された場合には、これを保母の配置基準(保母定数)に含むものとされていたが、こうした点を踏まえ、乳児6人以上を入所させる保育所に係る最低基準上の保母定数については、当分の間、当該保育所に勤務する保健婦又は看護婦を、1人に限って、保母とみなすことができるものとしたこと。

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どっちにしても矢野「市議」の質問内容はよくわかりません。看護師1名を保育士と認めろと言いたいのか、国はそんなことを認めていないと言いたいのか。佐藤市議の報告に間違いがある可能性もないとは言えませんので、議事録が公にされるのを気長に待つことにしましょう。議事録が公にされたからといって質問内容が明瞭になる保証はないのですが。