「規制緩和」と「保育の質」を考えるいくつかの資料


12月11日午前7時現在、東村山市民新聞」の更新はありません。今日は1日出かける予定であまり時間がないため、保育園問題に関わるいくつかの新聞記事を紹介するだけにしておきます。


12月7日付の記事の追記で、〈保育中の死亡、5年半で49件…7割が0〜1歳〉という読売新聞の記事(2009年12月7日23時02分配信)を取り急ぎ紹介しておきました。東村山市民新聞」胸が悪くなるような更新はこれに反応したものではないかとも思われますが、毎日新聞の記事を読むと、厚労省の調査の背景がもう少しよくわかります。

保育施設:52人死亡、厚労省が初公表−−04年4月〜09年11月
 厚生労働省は7日、04年4月〜今年11月に保育施設で起きた乳幼児の死亡事故は49件あり、52人が死亡したと発表した。認可保育所が19件19人で、認可外保育施設は30件33人だった。今年4月1日現在の認可保育所の利用者は204万人、08年3月末の認可外保育施設の入所者は23万人で、認可外の事故の発生率が高くなっている。
 保育施設での死亡事故を巡っては、遺族らでつくる「赤ちゃんの急死を考える会」(櫛毛冨久美会長)が先月、1961〜08年度に240件起きたとの調査結果を厚労省に提出し、認可保育所の基準を緩和しないよう申し入れている。これを踏まえ厚労省は、自治体からの報告を基に事故の詳細が分かる04年度以降に限って集計、初めて結果を公表した。
 死亡児の年齢は、認可保育所では0〜2歳がそれぞれ4人ずつで最も多く、認可外保育施設は0歳児が19人と突出し、次いで1歳児が9人だった。就寝時の死亡が多いが▽本棚の中で熱中症▽園庭のミニトマトを食べて窒息▽園外保育中の交通事故−−などもあった。
 厚労省は事故防止のポイントとして▽窒息事故防止のための観察の実施▽複数の目で点検しチェックリストに記入−−などを挙げた。【佐藤浩
毎日新聞 2009年12月8日 東京朝刊


今回の調査については、厚労省のホームページでも〈保育施設における死亡事例について〉として概要が紹介されています。いろいろと首をひねる箇所があるのですが、それは後からコメントするとして、この調査のきっかけを作った「赤ちゃんの急死を考える会」によれば、認可園での事故は、やはり保育所規制緩和が加速した2001年を境に増えているようです。

認可保育園:01年境に事故死増える 規制緩和影響か
 保育施設などで急死した子どもの遺族、弁護士らでつくる「赤ちゃんの急死を考える会」(櫛毛冨久美会長)が18日までに、保育施設での死亡事故を分析したところ、認可園での事故は「待機児童ゼロ作戦」で保育所規制緩和が加速した01年を境に増えていたことがわかった。現在、政府は都市部認可園の基準緩和を進めようとしているが、同会は20日、厚生労働省に基準を緩和しないよう申し入れる。【本橋由紀、山崎友記子】
 遺族からの相談や報道などをもとに1961年度から2008年度までの死亡事故240件を調査、分析した。
 認可園での死亡事故は00年度までの40年で計15件。内訳は61年度からの10年ごとでみると60年代2件、70年代6件、80年代1件、90年代6件だ。しかし、01年度以降の8年で22件起きた。
 01年は小泉純一郎元首相が所信表明演説で「待機児童ゼロ作戦」を打ち出した。認可園について、年度途中に「定員の25%増まで」という定員の弾力化の「枠」が撤廃され、面積基準内なら子どもが入所できるようになった。9月には、「保育士定数の8割以上は常勤」との規定も、年度途中の園児増に対応する場合は、非常勤保育士でかまわなくなった。
 同会のまとめでは、かつての事故は「うつぶせ寝」などによるものが多い。しかし01年度以降は、遊具置き場で首を挟まれ呼吸停止(02年・1歳4カ月)▽川でおぼれた(04年・6歳)▽本棚下の収納部で熱中症(05年・4歳)など、保育士が目を離した際の事故や「経験不足の短時間保育士が穴埋めする現場が、事故の背景と思われる」(小山義夫副会長)事例も増えた。採用直後の保育士がリンゴなどを食べさせ窒息(02年・1歳)▽若い保育士がうつぶせ寝にして掛け布団をすっぽりかぶせ1時間放置(08年・1歳)などだ。
 厚労省保育課の担当者は「保育施設での死亡事故については国への報告を義務づけておらず、自治体から任意で連絡があった分しか把握していない。データがないので、定員の弾力化など規制緩和との関連性があるかはわからない」と話す。
 保育園での事故に詳しい高見澤昭治弁護士は「待機児解消は切実だが、認可園でも事故が増えている。国は調査監視もせず、さらに基準を緩和するのでは子どもの命と安全は守れない」と指摘する。
毎日新聞 2009年11月19日 2時30分(最終更新 11月19日 3時26分)


この記事については、共産党の保延市議も一般質問で取り上げたはずですね。保育の規制緩和を無批判に容認・推進する「草の根」は別として、保育の質を維持・向上していかなければならないという思いは市議会各会派が共有していると思われますが、東村山市はこれらの事実をどのように受け止め、どのような選択をしていくのでしょうか。