補助金不交付損害賠償請求裁判で敗訴しておきながら市の担当課長の処分を求める矢野穂積「市議」


東村山市民新聞はしばらく「最終更新日」の修正のみという状況が続いていましたが(4月4日付、2010/04/03 19:40:13/4月5日付、2010/04/04 20:10:15/4月6日付、2010/04/05 16:52:18)、4月7日付で、〈◎ ついに顔と名前を露出させた「検察特捜クーデター」の黒幕たち(ジジ新党の関係者)!〉というどうでもいい記述が追加されました(2010/04/06 19:47:51)。もういちいち解説を試みるのも面倒です*1



さて、ずいぶん間が空いてしまいましたが、3月2日付〈続・りんごっこ保育園名誉毀損裁判について何度も同じ質問を繰り返す矢野穂積「市議」(NPO法人「林檎の木」理事)〉の続きを書きかけのまま放置していたので、この機会に掲載しておきます。東村山市議会平成22年3月定例会の一般質問にあたり、矢野穂積「市議」は次のような通告を行なっていました。

2.行政手続条例違反を断定した東京高裁確定判決と市長の責任を問う。違法な主張を繰り返した当時の担当課長をどう処分するのか。
(1)東京高裁確定判決では、法令違反を明確に断定された。当時の担当課長の言動は法令違反であることがはっきりしたが、裁判所から違法な決定だと断定されたことの責任をどのように考えているか。市長は、違法な主張を繰り返し違法な決定を強行した当時の担当課長をどう処分するのか、判決まで放置したその責任を問う。


当初、これはてっきりりんごっこ保育園名誉毀損(平成18年附帯決議)裁判に関するものだろうと思っていたのですが、佐藤市議の報告により、別の裁判(補助金不交付損害賠償請求裁判)に関するものだったことが判明しました。2008年4月18日の東京地裁判決でりんごっこ保育園が敗訴した裁判ですが、やはり控訴していたんですね。


補助金不交付損害賠償請求裁判の概要については、鈴木忠文市議ブログ〈補助金不交付裁判の結果〉を参照してください。やや乱暴にまとめてしまえば、やるべきことをやらなかったから補助金がもらえなかったというだけの話です。


佐藤市議によれば、今回の一般質問は次のような様子だったとのこと。

さらに、りんごっこ保育園が市を訴えていた裁判に絡んで、特定の課長の実名を挙げて、「○○課長が違法な主張をしていたことが東京高裁確定判決ではっきりした。なぜ処分しないのか!?」と〔矢野穂積「市議」が〕迫るものですから、てっきり保育園側が勝ったのかと聞いていますと、市長は「そのような記述が確かに判決書にあるが、裁判自体は原告(保育園園長)の主張が全て退けられて終わっている」と返すではありませんか。


けっきょく控訴審でも敗訴してそれが確定したようです(上告したかどうかは不明)。それなのに「違法な主張を繰り返し違法な決定を強行した当時の担当課長をどう処分するのか」などと大騒ぎするのは、いったいどういうことなのか。


東京高裁判決を入手していないので仔細は不明ですが、東京地裁判決PDFファイルもあり)には次のような記述があります。少し長めに引用しますが、太字にした部分だけ見ていただいても結構です。

 2 本件不交付決定の違法性について
  (1) まず,本件補助金の交付は,市民の権利義務を制限するような処分ではなく,社会福祉法人及び公益法人が設置した保育所とそれ以外が設置した民間保育所との格差是正及び保育内容の向上並びに児童福祉の増進という公益目的でなされる受益的な行為であること,本件補助金の交付は,保育所から事情聴取等を行った上で,市長が補助の必要性があるか否かを判断し(本件補助規則4条1項ただし書),その補助額についても同規則別表3に定める基準を上限として,予算の範囲内で決定するものであり(同規則6条),「・・格差是正を図るため市長が必要と認める場合に補助するものとする。」(同規則第4条1項ただし書)と定められていることに照らしても,補助の必要性の判断が市長の裁量に委ねられていることは明らかであって,最低基準を超えて職員を配置すれば当然に本件補助金が交付されるものと解することはできない。
 そして,市長が行う本件補助金交付の必要性の判断は,保育所における保育士の人数のみからできるものではなく,当該保育所における保育士の配置状況や職員の勤務条件,給与水準等を含めた具体的な待遇内容を把握し,当該保育園の運営状況との関係も考慮した上で,補助の必要性についての判断をすべきであって,このような判断の性質上,本件補助金の交付は,市長の広範な裁量に委ねられていると解すべきであるが,市長がその裁量権を逸脱又は濫用して本件補助金の交付,不交付決定を行った場合には,市長の本件補助金に係る決定が違法となり得ると解すべきである。
  (2) 以上の本件補助金の内容,性質,市長の判断の性質等を踏まえ,前記「前提となる事実」及び認定事実に基づき,本件不交付決定に被告市長の裁量権濫用の違法があるか否かにつき検討する。
   ア まず,原告は,本件補助金交付決定の審査基準が何ら定められていないのは,市行政手続条例5条に違反する旨主張するところ,弁論の全趣旨によれば,本件補助金交付の審査基準が明示に定められていなかったことが認められるが,仮に,これが市行政手続条例5条違反に該当するとしても,そのことから直ちに本件不交付決定自体が違法となるものではない。のみならず,そもそも,本件補助金交付の必要性は,前記のとおり,保育所における保育士の人数のみから判断できるものではなく,当該保育所における保育士の配置状況や職員の勤務条件・給与水準等を含めた具体的な待遇内容,当該保育園の財政等の運営状況との関係等を総合的に考慮した上で,補助の必要性について判断すべきであり,必要性を判断する際の考慮要素は上記のような項目としてそれを明示に定めることができないとはいえないものの,このような考慮要素を踏まえた本件補助金交付の審査,判断の基準自体を明示に具体的に定められるものかという点については,大いに疑問が残るものであるから,本件補助金交付の審査基準が明示に定められていなかったとしても,直ちに市行政手続条例に違反することにはならない。
 したがって,原告の主張は,いずれにせよその前提を欠くものである。(なお,原告は,本件補助金を受けるために必要な手続の明示と説明を求めたにもかかわらず,これに一切応答しなかった被告の対応は,補助金交付決定の審査基準の閲覧請求権を定めた市行政手続条例5条3項に違反する旨主張するが,原告主張の事実があったとしても,それは本件不交付決定の違法性の有無の判断に直結したり,それを基礎付けるものではない。)。


「本件補助金交付の審査基準が明示に定められていなかった」こと、「本件補助金を受けるために必要な手続の明示と説明を求めたにもかかわらず,これに一切応答しなかった」こと等について、東京高裁判決ではもう少しはっきりと東村山市行政手続条例違反が認定されたのかもしれません。どっちにしても、不交付決定そのものについては違法性が認定されず、りんごっこ保育園側の請求が却下されたというのですから、担当課長を処分する必要もないでしょう。


薄井市議から訴えられた「セクハラ市議」名誉毀損裁判で敗訴して200万円の賠償金を命じられたくせに、それでもなお薄井市議は潔く自発的に辞職を!などと騒ぐ矢野「市議」らしい話ではあります。


〔この記事は4月8日の夜にアップしたものです。〕

*1:【追記】4月9日付更新(2010/04/08 21:18:04)で、「ジジ新党の関係者」ナベツネらジジ新党の関係者」に修正されました。早く中村克サンと(以下略)