京都朝鮮学校襲撃メンバーが組織犯罪処罰法違反容疑で告訴されていたことなど、大事なことは明らかにせずに警察への抗議を煽る桜井誠・在特会会長


東村山市民新聞の更新記録がいくつかたまっていますが、順番に記事を埋めていきます(この記事は10月6日に書いています)。2日に行なわれた「朝木明代議員追悼の集い」については、とりあえずTogetterまとめ〈故朝木明代議員(東村山)追悼集会に「行動する保守」主要メンバーが集結して一騒動〉およびそこで紹介している関連記事(とくに凪論の一連の報告)を参照。


さて、徳島県教組襲撃事件で起訴された6名が保釈された件について、川西市議選に立候補を表明しているなかそちづ子(おつる)氏は意図的にか無意識にか釈放と書いていましたが、ここが変だよ在特会(仮)〈不思議なおつるちゃん(笑)〉でも指摘されているように、これはあくまでも保釈であって裁判はこれからです(書類送検された12名がどうなるかも、まだ決まっていません)。事実、保釈されたメンバーについては次のような厳しい保釈条件が課されています。


保釈時の制限にご協力を!
京都の朝鮮初級学校事件の逮捕者の保釈条件は接触制限対象者として、直接事件に関わった者、および、在特会・主権回復を目指す会に所属する者となっております。
また担当弁護士よりこれらの会と一緒に活動していた方々も接触しないように要請を受けております。
また徳島教組事件では、接触制限対象者として告発者側の女性2名と逮捕者7名、在特会が挙げられております。
皆さまには、逮捕されたメンバーのことをご心配いただき、心より御礼申し上げます。
裁判にて判決が出る日まで、もうしばらく、直接的な接触及び通信等をご遠慮いただきますようお願い致します。


まとめると次の通りです。

被告人 接触制限対象者
川東大了
西村斉
荒巻靖彦
京都朝鮮学校襲撃事件に直接関わった者
在特会
在特会・主権回復を目指す会の構成員(および両会とともに活動していた者)
徳島県教組襲撃事件における他の逮捕者
徳島県教組襲撃事件の被害者(女性)2名
中谷辰一郎
京都朝鮮学校襲撃事件に直接関わった者
在特会・主権の構成員(および両会とともに活動していた者)
ブレノ(松本修一)
クロエ(中谷良子)
他2名
徳島県教組襲撃事件における他の逮捕者
徳島県教組襲撃事件の被害者(女性)2名


1日に行なった生放送でも、桜井誠・在特会会長はこのような保釈条件が課されていることを強調し、接触を控えるように強く呼びかけていました。それだけでは足りなかったらしく、自分のブログ在特会公式サイトでも重ねて要請しています。


ある弁護士がお書きになっているところによれば、「保釈がおりた事案においては、判決においても執行猶予がつく可能性が極めて高いということが予測される」一方、「保釈条件に違反したということは裁判においても大きな影響を持ち、本来ならば執行猶予がつく事案であっても、実刑が宣告されてしまう危険も」出てくるそうで、桜井会長がこれだけ必死になるのも当然と言うべきでしょうか。京都の事件が起きた時、
「この桜井が必ずね、今回の朝鮮学校問題、日本全国に広げてみせますからね!」
「我々にね、このような侮辱的な行為をやったもの、我々がですね、正当な抗議をやったことに対して威力業務妨害などという告訴、おどしをかける者に対しては、必ず報復します!!」

などと煽るのではなく*1、統制のとれた行動を呼びかけていれば、あるいは徳島県教組襲撃事件で計19名が逮捕・書類送検されるような事態は起きなかったかもしれないというのに。


しかも、桜井会長はなぜか明らかにしていませんが*2京都朝鮮学校襲撃事件では4名が刑法(侮辱罪)のほか組織犯罪処罰法(威力業務妨害罪)でも告訴されており、うち川東大了はさらに暴力行為等処罰法(器物損壊罪)でも告訴されていることがわかりました(りゅうオピニオン〈【京都朝鮮学校嫌がらせ事件】「人権と生活」(No.31)康仙華弁護士の記事を読んだ〉参照)。威力業務妨害罪と器物損壊罪は通常であれば3年以下の懲役ですが、それぞれ刑が加重されていずれも最長5年の懲役刑を科すことが可能になりますので、場合によっては執行猶予の要件(刑が3年以下の懲役であること等)が満たされずに自動的に実刑判決となることも考えられます。これでは、なかそちづ子(おつる)氏が徳島県襲撃事件への在特会の関わりを必死に否定したくなるのも当然かもしれません。


しかし、桜井誠・在特会会長は裁判の行方を冷静に見守るよう呼びかけるどころか、
徳島県警と京都府警に抗議していただきたい。絶対に抗議しなきゃダメ
在特会としても徳島県警と京都府警に怒りの声をあげるつもり

などと煽動を開始しました。京都朝鮮学校襲撃事件で逮捕者が出た8月10日の生放送では、
「いまの時点での暴発だけは防いでいただきたい」
「私がみなさんに呼びかけを行なうまで暴発はしないように」

などと抑えていましたが、メンバーの身柄を奪還したことで、そろそろ京都府警・徳島県警に対する命懸けの抗議が始まるのでしょうか。これだけで終わるかどうかも、まだ定かではないというのに。もっとも、桜井会長は命懸けの抗議を呼びかけたいと述べていただけなので、命を懸けるのはたぶん別の人になるのでしょうけれども。


1日の生放送で、桜井会長はこんなことも述べていました。


「徳島についても告発を行なったが、地検・県警ともに受理しなかった。徳島県警の言い分は、日教組は大きな組織なので手に負えないと説明した。とんでもない。巨悪を眠らせないどころか煽り立てている」
「徳島県警・地検は募金詐欺を認識していながら告発状を受け取ろうとしない。それどころか業務を妨害として在特会の会員を逮捕した。こんな不正義がまかり通る世の中であってはならない」


しかし、いつ、どのような証拠を添えて告発を行なったのかについては明らかにしていません。4月27日に徳島市内で行なわれた記者会見の後、川東・西村・山道らが
徳島県警へ日教組および徳島県教組に対する告発状を提出に向かっています
と書いていましたが、それから何の報告もせずにいきなりこんなことを言われても、にわかには信じがたいというものです。徳島県警が「日教組は大きな組織なので手に負えない」と述べたというのも、8月10日の生放送以来ぱったり出てこなくなった(朝鮮学校への)抗議のときに出てきた人間はどう見てもヤクザ。ひとりは組事務所にも出入りしていることをつきとめたという発言と同様に、怪しさ満点と言うべきでしょう。ひょっとしたら本当に徳島県警・地検に行ったのかもしれませんが、だったらその告発内容および添付した証拠ぐらいは明らかにするべきです。


京都朝鮮第一初級学校についても、9月9日の略式命令後も勧進橋児童公園を運動会で使っていたと文句を言って「告発するつもり」と宣言していましたが、P2Cさんが指摘したように「占用」と「使用」は別の話であり、告発状を持っていっても体よく追い返される可能性が高いでしょう。よく調べずに告発を乱発すれば、下手をすると虚偽告訴罪にもなりかねないのではないでしょうか。


「MBSは生中継の映像を勝手に流してた。著作権者である桜井に断りもなく勝手に。きちんと訴える。見てたら後で謝罪の電話をください」
とも宣言していましたが、これまたP2Cさんが指摘していたように「公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道・・・その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれる」著作権法第32条第1項)引用は認められていますので、たぶん謝罪の電話は来ないでしょう。訴えたら報告してくださいね。


ついでに、人種差別撤廃委員会が著作権者たる在特会が撮影した映像を許可無く使用したなどというデマも訂正してはどうかと、無駄だとは承知しつつ指摘しておきましょう。そういえばテレビ朝日についても一私人の家に来て勝手にカメラを回すのは人権侵害と騒いでいましたが、抗議なり提訴なりはしたんでしょうか。


このように、その場その場の思いつきで適当な煽り文句を並べ立てるだけの人間が率いている在特会に対しては、公的機関やメディアによる一層の監視と対応を期待したいところです。


〔この記事は10月6日の午後アップしたものです。〕

*1:2009年12月20日に京都・ウトロ地区で行なわれたデモでの発言。動画は削除された模様だが、2010年4月21日付エントリーの後半参照。

*2:ちなみに、桜井会長は京都事件・徳島事件ともに書類送検については一切触れていない。