「重要容疑者」裁判・矢野側尋問につっこみを入れてみる(1)


6日の「柳原滋雄コラム日記」裁判(「重要容疑者」裁判)第3回口頭弁論以降、東村山市民新聞では、1日空けて「最終更新日」が1月9日付に修正され(2011/01/08 20:21:48)、翌9日にも「最終更新日」が修正されただけでした(1月10日付、2011/01/09 16:00:20)*1。やはり現段階ではこの裁判の件に触れたくないのでしょうか。


一方の柳原滋雄さんは、〈9時19分から10時までの「40分間」をどうよむか〉として事件当日の状況についてさらに踏み込んだ推測を行なうとともに、〈“2人の関係”めぐり「親族会議」まで開かれていた朝木家〉という、挑発的とも思える記事までアップしました。提訴しないのは真実だと認めているからであるというのが持論で、紙版東村山市民新聞」168号第3面でも創価学会に向かって
「反論しないのは認めてるのですね?」
と問いかけている矢野穂積「市議」は、一体どうするのでしょうか。


さて、1月7日付〈「不利な事実は公表せずに一方的に自分に都合のよいことを公表」する「草の根」の体質を見事に体現した矢野穂積側尋問(「重要容疑者」裁判)〉の関連エントリーとして、福間智人弁護士(中田総合法律事務所NPO法人「林檎の木」理事)が矢野穂積「市議」の代理人として柳原さんに対して行なった尋問の内容に順次つっこみを入れていきましょう。なお、柳原さんが書いている内容について福間弁護士が触れている部分については、傍聴記を見るだけでは出所が不明確な場合も少なくありませんので、基本的には正しい(柳原さんが実際にそういう趣旨のことを書いている)ものとして扱います。


福間 本件ブログ甲1号証では、【上記の細かな事実関係は、信頼するジャーナリスト・宇留嶋瑞郎著『民主主義汚染』による】と書いていますが、この認識は今も変わりませんか。
柳原 その通りです。
福間 宇留嶋氏は謀殺説もあり得るというニュートラルな立場から取材をした・・・とあなたは書いていますが、この認識は変わりませんか。
柳原 本人に聞いているので変わりません。


要は『民主主義汚染』およびその著者である宇留嶋瑞郎さんの信頼性を貶め、もって柳原さんの記事にも信頼性がないことを立証しようとしているのではないかと思われますが、矢野・朝木両「市議」が『民主主義汚染』については提訴していない以上、矢野「市議」らの持論にしたがって導かれる結論はひとつ(=同書に書かれていることは基本的に正しい)であるように思われます。宇留嶋さんがニュートラルな立場から取材をした」かどうかは知りませんが、矢野「市議」らが、タイトルと本文がまったく関係ない事件発生当時の東村山署のあの千葉英司元副署長と「ライター」の関係は?〉というページを設けるなど、中身のない印象操作に必死であることは付言しておきましょう。
(注/〈事件発生当時の東村山署のあの千葉英司元副署長と「ライター」の関係は?〉という見出しが登場したのは2009年3月6日付更新、内容が付け加えられたのは同3月9日付更新、新規ページに移植されたのは同3月27日付更新。2008年11月7日付〈時を駆ける(そしてコケる)瀬戸弘幸〉も参照。)


福間 甲10号証の高裁判決を示します。「創価御用ライター」と言われても違法性はないという判決が出たことは知っていますか。
〔中略〕
柳原 知っております。


これは宇留嶋さんがクロダイくん(行政書士黒田大輔)を訴えて敗訴した第2次「御用ライター」裁判のことですね。何度も書いているように、判決(第1審)では、
「原告〔宇留嶋さん〕創価学会からいかなる方法をもってプロパガンダや情報操作の指示を受け、どのような記事を執筆するよう指示されたのかについて、何ら具体的事実を明らかにしているものではなく、・・・〔読者は〕被告が、原告の執筆したものは創価学会の主張に近い傾向を有するという評価を下しているということを認識するにとどまるというべきである」(=「創価御用ライター」というのは具体性のないただの悪口に過ぎない)
という理由で名誉毀損性が否定されただけであり、しかも別の裁判(第1次落書き名誉毀損裁判)では、クロダイくんは、
「原告〔宇留嶋さん〕創価学会が密接な関係を有しており、原告が創価学会の意を受けて事実とは異なる創価学会に有利な内容の記事を書いている」
という摘示事実の真実性・相当性を立証できなかったこともあって、10万円の損害賠償を命じられています(確定)。なおかつ、これまた何度も指摘しているように、矢野・朝木両「市議」は創価御用ライター」という表現が「必ずしも、適切ではなかったことは認め、遺憾の意を表」しています(第1次「創価御用ライター」裁判)。


こうした経緯からは目をそむけ、クロダイくんが敗訴を免れたことに乗っかって
〈この判決によって、〔「創価御用ライター」という言葉は〕誰でも使用できる代名詞になったと一般に理解されることだろう〉2009年11月17日付更新
〈ウルシマは「創価御用ライター」! 「この表現に違法性はない」と認定!。ウルシマまた敗訴。〉2010年3月22日付更新
などと騒ぐのが矢野・朝木両「市議」だというわけです。しかも、『月刊タイムス』事件で勝たせてくれた裁判官を「創価系判事」と罵っちゃうなどというみっともない真似までして。


福間 多くのメディアが全て敗訴したとあなたは書いていますね?
〔中略〕
福間 ・・・甲21ー1の高裁判決を示します。東京高裁の判決です。創価学会がフォーラム21に名誉を毀損されたという裁判で創価学会が敗訴したものです。
柳原 前の私が書いたというものを見せてください。すべて敗訴したという部分ですか。その部分は修正いたします。
福間 この裁判について、あなたはご存じなかった。
柳原 知っておりますよ。


「フォーラム21」事件は、矢野・朝木両「市議」が創価学会と争った一連の裁判の中で唯一勝訴した裁判です。しかも、
「本件記事は、朝木明代市議転落死事件は創価学会が朝木明代市議を殺害した『他殺』事件であるとの事実を、明示的にも黙示的にも摘示するものとは言えない」(=創価が殺したとまでは言ってない
という理由で勝訴したに過ぎない。そりゃ「全て敗訴した」というのは間違いでしょうが、
「実質勝訴で敗訴判決控訴せず」「潮」事件
「形式上敗訴したが、・・・事実上,、襲撃犯が確定した」少年冤罪事件
などといい加減なふかしを交えながら結果を誤魔化すことの方がよほど悪質でしょう。


福間 原告らの訴訟は2400万円に及ぶ損害を東村山市に与えていると書いていますね。あなたは、原告を不利な事実は公表せずに一方的に自分に都合のよいことを公表していると非難しています。甲23号証を示します。まだお読みになっていないかもしれませんが。
柳原 読んでいませんね。
〔中略〕
福間 インターネットでも公開されている東村山市議会の会議録です。7600万円に及ぶ額を原告は取り戻した。そうした事実をあなたは一切指摘されていない。一方的だと感じませんか。
〔中略〕
柳原 まったく感じませんね。いいことをしたとアピールするけれども、訴訟を起こして東村山市に損害を与えたことを指摘しなければバランスを欠いていることになります。裁判費用の全体像を説明されていないでしょう。


これについては、「東村山市民新聞」の迷宮〈税金「取り戻し」〉〈税金「取り戻し」関係資料〉〈行政訴訟一覧〉を参照。そもそも議事録で政策室長が 認めた金額は約1156万円(あるいは2700万円強)に過ぎず、7600万円というのは矢野・朝木両「市議」が主張しているに過ぎません。ついでに、この答弁が行なわれたのは11年前の平成12(2000)年であり、以降、矢野「市議」らが主張する「取戻し」額は10年以上まったく増えていないことも付言しておきましょう(直近の更新は2010年3月7日付〈「××のひとつ覚え」の見本を瀬戸弘幸サンに教えてあげよう〉を参照)。


また、私は直接確認していないのですが、凪論〈平成23年の始まりに考える 2 〜東村山市の未来が決まる平成23年〜〉で
東村山市経営政策部政策法務課の訴訟対応費用が増大したのも彼ら東村山市議会会派『草の根市民クラブ』の提起した様々な訴訟によるものであることは、『草の根市民クラブ』の訴訟が一段落した年の政策法務課予算が前年度と比較して著しく減少した事実からも明らかである」
と指摘されていることも紹介しておきます。


福間 あなたは、95年9月1日、原告らのアリバイ工作が虚構であることを見抜かれ、悪影響が出るとして強く叱責し・・・と書いていますね。
柳原 ああ、そうですか。十分にあり得る話だと書いているのです。直接、千葉氏に取材をしました。捜査機関にアリバイ工作が虚構であることを見抜かれているということは公知の事実です。
福間 乙16号。あなたの方から出してきた潮事件と関係者が呼んでいる判決です。
千葉は,9月11日の被告Iの取材の際,被告Iに対し,亡明代がそのアリバイ主張と相容れない本件レシートを提出したことについて,「亡明代がアリバイ工作を図った」と述べたものと認められる。これに対して,被告東京都は,被告千葉が「アリバイは信用できない。」と述べたことはあっても,「アリバイ工作を行った」と述べたことはないと主張し,これに沿う千葉の供述記載(丁4)もある。しかしながら,被告Iが9月11日に作成した本件取材メモに,千葉の発言として「アリバイ工作」と記載されていること,本件記事以外の報道においても「アリバイ工作」との表現が用いられており(乙5),これは千葉が記者に対して「アリバイ工作」と述べていたことを窺わせることから,この点に関する千葉の供述は信用することができない。
千葉は「信用することができない」と認定されていますね?
〔中略〕
福間 千葉さんの供述は、アリバイ工作と言ったのか、アリバイが信用できないと言ったのか、そういう程度の話でしょ? 千葉さんの人間性がどうだとか、嘘をつくような人間であるとか、そういう判決ではありませんよ。


「この点に関する千葉の供述は」という部分を完全に無視して「千葉は『信用することができない』と認定されていますね?」と弁護士らしからぬ質問をしており、裁判長が笑ってしまったとしても無理はありません。矢野・朝木両「市議」がこのような卑劣な情報操作を繰り返してきたことについては、2009年12月17日付〈「副署長千葉の供述は信用できない」という認定(「潮」事件判決)をめぐる矢野・朝木両「市議」の悪質な情報操作〉参照。いくら依頼人の指示があったとはいえ、仮にも弁護士がこんな発言を法廷でやらかしちゃうのはいかがなものでしょうか。


福間 「本件窃盗被疑事件を断定するに足りない」「虚偽であったとまで認めることはできない」と判決は認定しています。あなたが提出した判決ですが読みましたか。
柳原 熟読したかどうかは別にして読んでいます。
福間 判決でアリバイ工作と万引きが否定されていますね。
柳原 1つの民事裁判だけの問題ではないでしょう。反対の判決がたくさん出ていますよ。断定できないだけで、捜査当局が判断しています。私も警察の裏金の問題など、さまざま問題があることは知っています。ですが、私が取材した結果をすべてトータルで考えて、この事件での警察の捜査は正しい。潮事件のただ一つの民事判決だけを見るのではなく、そうでない判決もたくさん出ている。
福間 自殺したと認めるにたりる証拠はないと判決にありますよ。
柳原 だから、この事件は民事で十数件の判決が出ているんですよ。


これも「潮」事件判決からの引用のようですが、万引き被疑事件については、その前段で
「亡明代から主張された当日のいわゆるアリバイが根拠のないものであり、かつ、そのアリバイが意図的に作出されたとみる余地も十分にあること等の事情も考慮すると、その可能性は相当程度に達するものと思われる」
と指摘されており、しかし断定するだけの証拠はないと認定されたに過ぎません。事実、「亡明代が本件窃盗被疑事件の犯人であると信じたことには相当の理由があると認められる」として相当性は認定されています。もちろん、「潮」事件判決が万引きを否定したものでないことは、「創価問題新聞」事件控訴審判決においても
「本件転落死が殺人事件であること、及び女性市議が万引きをしていないことが真実であるとしたものではな〔い〕
と指摘されている通りです(2009年1月31日付〈東京高裁に“判決の誤読”を厳しく指摘された矢野・朝木両「市議」〉等も参照)。


アリバイ工作疑惑についても、
「アリバイが意図的に作出されたとみる余地も十分にある」
「本件レシートによるアリバイの主張そのものには根拠がないことが明らか」

などとしつつ、
「本件窃盗被疑事件が発生したとされる当時、亡明代が本件レストランにいたとのアリバイが虚偽であったとまでは認めるに足りないから、このアリバイの主張が意図的に虚偽の事実を主張したものとまで認めることはできない」
と認定されただけです。「潮」事件判決はやはりアリバイ工作の可能性そのものは否定しておらず、相当性についてはここでも同様に認められています。


自殺についても同様ですね。「創価問題新聞」事件控訴審判決も、「潮」事件判決について、
「女性市議の死因が自殺であるとみる余地は十分にあるが、なお女性市議が自殺したとの事実が真実であると認めるには足りないとしたものであり、本件転落死が殺人事件であること・・・が真実であるとしたものではな〔い〕
とはっきり述べています。よくもまあ裁判官の前でこんなインチキな判決解釈を堂々と披露できるものです。


ちなみに、前のエントリーでも指摘したように、西村修平・街宣名誉毀損裁判では
「本件転落死事件当時、亡明代に自殺の動機がなかったとはいえない」
とさえ認定されています(第1審)。


福間 レストランがレジジャーナルの提出を求められ、最初は公的機関でないと出さないと言っていたのに、裁判所からの送付嘱託にも応じなかったんです。あなたは知っていましたか。
柳原 明確には把握しておりません。
福間 知らないんですね。
柳原 聞いたかもしれませんが、覚えておりません。認識の中に定着していないということです。
福間 捜査機関もレジジャーナルを開示していないんですよ。知っていますか。
柳原 質問の趣旨がわかりませんが。刑事事件の公判になれば、当然、出てくる証拠がそうはなっていないので出てきていないだけではありませんか。


このあたりの話についてはエアフォース〈創価問題新聞事件〉で詳細に取り上げられていますので、特に以下の回を参照。

  • 第3回:不可解な答弁書/捜査員を脅した明代
  • 第4回:提出された反訴状/取調室でみせた動揺/リストを見せられていた矢野
  • 第5回:醜態を繕う弁明/提出されない録音テープ
  • 第6回:東村山署ではなく地検でメニューを変更した不思議/メニューを切り出さない矢野
  • 第7回:レシートのメニューを確認しなかった理由/今度は店長に責任を転嫁/(食べたメニューは)「勘弁してもらいたい」
  • 第8回:得意の論点のすり替え/「日替わり」を認めざるを得なくなった矢野
  • 第9回:最初から「日替わり」だったことにしようとした矢野/見え透いた改竄
  • 第10回:狭められた包囲網/逃げ道をふさがれた矢野/「反訳」を提出した矢野の意図


長くなったので、続きは後ほど1月8日付エントリーとしてアップします。

*1:【追記】1月11日付更新(2011/01/10 15:39:41)も同様。