幻の「決定打!」完全不発記念新スレ(3)


【注/以下の記事は、掲示板「職業差別を許しません!」の〈ウォッチ継続・幻の「決定打!」完全不発記念新スレ〉に投稿したものを、必要最小限の修正を加えた上、各投稿を行なった日付の記事として当ブログに再掲したものです(2009年3月)。これ以外のスレッドについては〈「職業差別を許しません!」スレッドガイド〉参照。】


いよいよ本論ですが、まず今回の判決(神戸地裁平14・7・16)の位置づけから説明しておかなければいけません。仮にも議会に身を置く人間に対して、どうしてこんなことから説明しなければならないのか。


シンブンは、この判決について次のように述べています。

性風俗(ソープ以外も含む)が違法な「有害業務」であるとした確定判例
(中略)
……この有罪判決は、……神戸地裁で確定。判例法の地位を得ている。


多少なりとも法律について学んだ人なら、「判例法の地位を得ている」という部分を読んで思わず失笑ないし爆笑したことでしょう。私が前の書き込みでわざわざ「下級審判決」と書いた意味を、やっぱり理解できなかったようです。


本来は「判例」と「判例」を区別し、最高裁判決のみを「判例」と呼ぶのが厳密な用語法です。まして、「確定判例」などという言葉は、使うにしても最高裁判決、しかも最高裁による判例変更が想定しにくいものに限って使うべきものです。たとえば「議席譲渡」問題に関する最高裁判決とかね。


とはいえ、一定の法律についての解釈を示した上級審(高裁・最高裁)判決で、それ以降の司法判断に影響を及ぼしうるもの、すなわち先例としての重みを持つものを「判例」と呼んでも間違いではないでしょう。


しかし今回の判決は神戸地裁によるもので、このような位置づけを与えることはできません。あくまでも、裁判所が認定した特定の事実関係に照らし、特定の法律の条項(本件の場合は職業安定法63条2項)をどのように適用するかという点についての解釈を示したものです。


したがって、他の裁判所が本件判決に拘束されることはありえませんし、類似の事件で本件判決が積極的に参照されるかどうかさえ疑問です。つまり本件判決には、先例としての意味は基本的にありません。こんなことは、シンブン非公認ブログで〈判例じゃないよ「裁判例」〉さんがとっくに指摘してくれているではありませんか(2007/08/06 17:18の書き込み)。自分たちに不都合なコメントは承認しない(あるいはそういうブログしか見ない)のは過ちのもとですよ。


事実、類似の事件について異なる裁判所が異なる法律判断を示すことなど、とくに地裁レベルではざらにあります。つまり、本件判決が「判例法の地位を得ている」などという評価はまったくの誤りです。こんな基本的なことも踏まえずに「決定打!」などとはしゃいでいると、法学部の1年生にさえ笑われますよ。とりあえずウィキペディアでも見て少しは勉強してください。


さて、今回の判決をもとに、シンブンは次のように述べています。


1 ソープ(本番=売春)は勿論、「性風俗」は全部「有害業務」(確定判決)


これまた、シンブン関係者が判決の読み方さえ知らないことをあらわにするものです。「有害業務」イコール「違法」ではないことはいちおうわかったようですが、本件判決をどう読めば〈性風俗」は全部「有害業務」〉などという理解ができるのでしょうか。


職業安定法63条2号にいう「衆道徳上有害な業務」として本件判決で認定されたのは、あくまでも「各個室内で不特定多数の男性客を相手にお互い全裸になった上で手淫、口淫等の性交類似行為をする業務」にすぎません(この認定自体にもいろいろと問題がありますが、ここでは触れません)。


性風俗」にはこれ以外の形態のものもたくさんあります。そんなことは、「NC-15」というブログでも、とっくの昔に教えてもらっているはずですが。


判決というのは、とくに下級審レベルでは、あくまでも特定の事実関係に法律をどのように適用するかという点についての裁判所の判断を示したものにすぎません。事実関係がぜんぜん異なる他の事例に無理やり当てはめようとしてもダメです。


同じページでは、〈法が否定する「有害業務」〉という表現も2箇所で用いられています。


法が否定する「有害業務」を「職業」などと叫んだ薄井氏及び薄井擁護派は、これで完全に破綻です。


法が否定する「有害業務」を実質擁護した伊藤記者!


何を言っているんでしょうね。「有害な業務」は「有害な業務」にすぎないのであって、「法が否定する」こととはまた別な話です。本件判決でも、個室マッサージ店「P」で行なわれていた上記業務が法律違反であるとはいっさい述べられていません。あくまでも、そのような業務のために「労働者を募集した」ことが問題にされているのです。


じつはこの点に関わってシンブンは大きな墓穴を掘っているのですが、それは最後に述べましょう。


シンブン関係者、いやもう矢野・朝木両「市議」とはっきり言ってしまいますが、この2人に市議たる資格がないことは次の発言から(も)あらわになっています。


 2 「有害業務」の宣伝(求人など)は職業安定法63条2号違反の犯罪(懲役刑)
http://www.geocities.jp/higashimurayamasiminsinbun/page117.html


現行法は……性風俗全般を「有害業務」として否定しこれを宣伝すれば
犯罪として処罰することを定めています(職安法63条2号)。
http://www.geocities.jp/higashimurayamasiminsinbun/page130.html


目障りな人を追い落とすためには罪刑法定主義(法律なければ刑罰なし)などどうでもいいようですね。もう一度、職業安定法63条2号の規定をちゃんと読んでみてはどうでしょうか。

第63条 次の各号のいずれかに該当する者は、これを1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処する。
1.(略)
2.公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者


このように、処罰対象になる行為は「職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給」にすぎません。どこに「宣伝」と書いてあるんでしょうか。私はちゃんと各行為の定義(職業安定法4条)も教えてあげましたよね。再掲しましょう。


*「職業紹介」=「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすること」
*「労働者の募集」=「労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人に委託して、労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘すること」
*「労働者供給」=「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させること」


どこをどう読めば「宣伝」が含まれるんですか? 法律というのは、日本語能力のない「市議」らの恣意的な解釈に基づいて執行されるものではありませんよ。法律を理解する力もないのに人を犯罪者呼ばわりするなら、さっさと市議を辞めてください。


そもそも、性風俗の宣伝は風営法でも一定の条件で認められています。「シンブン」自体、関連規定を抜粋して掲載しているではありませんか。どうせ理解できないんでしょうけど。


それ以前に、そもそも薄井市議は性風俗の「宣伝」をしていたんですか? だったらそのことを立証してください。ちなみに、法律上の「宣伝」はメディア等での紹介とは異なりますので、注意するように。


最後に、矢野・朝木両「市議」がいかに大きな墓穴を掘ってしまったか、簡単に見ておきましょう。


2人は、性風俗に従事することを「職業」として認めるわけにはいかないと、一貫して主張してきました。


いや「一貫して」ではないですね。何しろ最初はこんなことを言っていましたからね。

大丈夫ですよ、あなたには帰るところがあります。
ほかの市議さんたちには真似のできない「風俗」という
得意な分野があるではありませんか! 自信をもって
「風俗」の世界でそのマニアックな持ち味を存分発揮してください。
少なくとも、「風俗」が法律で全般的に禁止されるまではネ。


職業差別」という批判を受けると「いや職業じゃない」と言い出したのですが、その姿勢は「公式見解」でも変わっていません。

違法行為である「売春」そして「有害業務」の性風俗は、
絶対に「職業」とは認められません。売春や性風俗
「職業」だといって「『職業』差別を許さない」などというのは、
違法行為や犯罪を認めよというのと同じです。


「違法行為」「犯罪」という主張が(あらかじめ)破綻していることはすでに見ていただきました。


ところで、矢野・朝木両「市議」が鬼の首をとったように喜んで参照している法律は何ですか?


はい。“職業”安定法ですね。


その63条2号で処罰対象とされている行為は何ですか?


はい。「“職業”紹介、“労働者”の募集若しくは“労働者”の供給」ですね。


「有害な業務」にいう「業務」とは何ですか? 法律には定義がありませんので、辞書を引いてみましょう。


“職業”や事業などに関して、継続して行う仕事」(大辞泉


というわけで、性風俗に従事することが「職業」であること、セックスワーカーが「労働者」であることを、矢野・朝木両「市議」は自ら認めてしまいました。チャンチャン。