幻の「決定打!」完全不発記念新スレ(13)


【注/以下の記事は、掲示板「職業差別を許しません!」の〈ウォッチ継続・幻の「決定打!」完全不発記念新スレ〉に投稿したものを、必要最小限の修正を加えた上、各投稿を行なった日付の記事として当ブログに再掲したものです(2009年3月)。これ以外のスレッドについては〈「職業差別を許しません!」スレッドガイド〉参照。】


あいかわらず、自分たちの主張の裏づけにはならない判決を次々と出してきますね。


判例
判例その3 最高裁第一小法廷判決(大法廷判決援用)
判例その4 「営業許可をうけていても公衆道徳上有害な業務」


判例その4(福岡高判昭28・1・31)からいきましょうか。これは、いわゆる「特殊喫茶」における「売淫」が「衆道徳上有害な業務」と認定され、そこに女性を紹介したことが職業安定法63条2号にいう「職業紹介」に当たるとされたもの。


売淫」とはすなわち「売春」ですから、「性風俗=すべて有害業務」という主張を裏づけるものにはなりません。まして、「職業紹介」の概念についてはこのスレッドの前のほうで説明したとおりなので、「有害業務の求人目的の宣伝行為は処罰対象」という主張ともまったく関係ありません。


判例その3ですが、職業安定法63条は憲法22条(職業選択の自由)に違反しないと判示したこの最高裁判決の存在は、私も当然知っていました。しかし、「有害業務は職業とは認められない」という矢野・朝木両「市議」の主張をやはり真っ向から否定するものなので、いくら墓穴を掘るのが好きな彼らでも、わざわざこれを持ち出すとは考えていなかったのです。いや〜ここまでとは(笑)。


この判決は、いわゆる売春宿と接客婦(売春婦)の関係が雇用関係に当たるかどうかを検討し、雇用関係の成立を認めたものです。もう墓穴の縁が見えてきましたね(笑)。


最高裁判決だけ見ていると事実関係がよくわからないので、第一審判決(大阪地判昭26・7・16)の概要を見てみましょう。ネットで検索すればすぐ出てくるんですがね。ちょっとは調べなよ。


●「大阪労働」特集資料(柳屋孝安氏作成)
〔リンク切れ〕


言葉遣いが古いのでポイントだけ要約しておきます。


職業安定法にいう雇用関係の成立とは、「広く被用者が報酬を得て一定の労働条件の下に使用者に対し労務を供給する関係(使用従属の関係)の事実上存在する場合をも包含するもの」である。そのさい被用者の供給する労務の種類にはなんらの制限もなく、あらゆる種類の人的活動が含まれるのであって、「売淫の如きも当然包含される」。


このように、ここでは売淫(売春)も「労務」すなわち「職業」であることが当然の前提とされています。


そして、最高裁判決もこのような原審判断を認容しました。そのうえ、次のように述べています(" "は引用者)。

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〔下級審判決は〕被告人が有料の職業紹介を行い又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で職業紹介を行つたことを処罰したのであつて、婦女の純然たる接客婦となる"職業"の選択を不法としたものでないこと明白である

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もちろんこれは売春防止法の制定以前の判決ですから、いまでは判断が異なる可能性もあります。だからあえて私も取り上げなかったのです。しかし、風営法にしたがって適法に経営されている性風俗業については、依然として妥当する判決だと言えます。


というわけで、「有害業務は職業とは認められない」という矢野・朝木両「市議」の主張は、自ら引っ張ってきた最高裁判決によって見事に粉砕されました。いや〜この人たちがどんどん墓穴を掘るので、東村山には広大な墳墓ができそうです(笑)。


【この記事に対する松沢呉一さんのコメント】

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松沢です。


この時代、売防法がなかったのですから、勅令9号や性病予防法、あるいは各条例に違反しない限り、売春は合法です。より厳密に言えば、売春自体はどこまでも合法で、それに伴う業態や方法が違法になることがあっただけです。


その点が今とは違いますが、3羽の雀さんがおっしゃるように、おそらくこの判例は今も生きているはずです。したがって、今の時代に、この判例を持ち出すことは必ずしもおかしくない。つまり、風俗産業ごときでも雇用関係は当然に成立するってことであり、言うまでもなくそれは職業であるってことです。


「矢野・朝木は何が今論じられているのかの意味が心底わかっていない」に10点。

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