内部告発と児童虐待通告義務


今日も「最終更新日」の修正のみでした。引き続き、りんごっこ保育園の問題について。


追記:この記事をアップしたあとに、佐藤市議が「『何か都合が悪いことでもあるのでしょうか』」(5月13日付)と題する記事を書いているのに気づきました。矢野「市議」は、「1月から3月にかけて、この保育園の保護者の一部、保育園職員の一部、外部の人間らが共謀して計画的に、りんごっこ保育園の認可取消を狙った、不穏な動きのあったことを強く指摘しておく」と、『FORUM21』5月号で書いているそうです。本当に“カルトチック”ですね。)


やまだKINGでも取り上げられていましたが、東村山魑魅魍魎ブログ「りんごっこ保育園の内部事情(監視編)」という記事を読むと、ますます“カルトチック”になっているみたいですね(3月26日付「りんごっこ保育園は秘密結社か」も参照)。


「保護者と変なことを話せないように常に園長や主任が先生を見張っている」
「先生同士、プライベートなことを話したり連絡先を交換するのも禁止している」
「何かあると園長や矢野議員が出てきてスパイがいるとか言ってビビらせたりしている」


祐天寺美桜さんは、「違法な行為を内部告発するのは/良識のある人間なら普通じゃないかな?」と書いていますが、そのとおりですね。


だからこそ、平成16(2004)年には「公益通報者保護法」が制定され、公益のための内部告発等を行なった労働者を保護することになったわけです。ちなみに「通報の対象となる法律一覧表」(PDFファイル)には「児童福祉法」も挙げられています。


何がどこまで「公益通報」として保護の対象になるのか、いまひとつわかりにくい制度なので、詳しくは内閣府の「公益通報者保護制度ウェブサイト」でも見てもらえればと思いますが、問題を表に出さないようにするための監視態勢の強化にばかり力を入れているのでは、法律の趣旨に反することは間違いない。というか、職員をそこまで締めつけて豊かな保育ができるんでしょうか。


一方、国会では、児童福祉法を改正して施設内虐待にも通告義務を課そうという話になっているようです(毎日新聞2008年2月7日付「児童福祉法:虐待、『施設内』も通告義務 都道府県は実態公表――改正案」)。児童虐待防止法はあくまでも「保護者」による虐待が対象ですので、それを施設職員にも適用しようという趣旨でしょう。改正案は3月4日に衆議院に提出され、現在審議中です(衆議院HP「審議経過情報」参照)。


改正案の抜粋を文末に資料として掲げておきますが、「虐待」の定義は児童虐待防止法と基本的に同様なので、体罰その他の不適切な接し方がすべて含まれるわけではありません。しかし、虐待にまでは至らなくとも、施設職員は子どもの「心身に有害な影響を及ぼす行為をしてはならない」という禁止規定が盛り込まれています(33条の11)。児童福祉施設最低基準9条の2にも同様の規定がありますが、児童福祉施設最低基準のような省令ではなく、法律レベルでこのような規定が設けられることには意味があると言えるのでは。


ところが、これは「家庭を出て施設で暮らす子供を支援する」(毎日新聞記事)ための改正案なので、保育所は対象になっていません(改正案33条の10)。確かに、園内で虐待が行なわれていれば、子どもの様子がおかしくなって親が気づくということも多いでしょう。けれども、虐待というほどではなくても、「心身に有害な影響を及ぼす行為」が日常的に行なわれていれば子どもの成長に悪影響は生じるでしょうし、早めに対応しなければいつか取り返しのつかない問題が起きる可能性もあります。


とくに幼い子どもの場合、園でひどいことやいやなことをされても、それを言葉で親に伝えることはなかなかできません。親のほうで気づけばいいのですが、保護者をロックアウトするような保育園の場合、それもなかなかむずかしい。


したがって、今回の改正から保育所を外す必然性は薄いと思うのですが、どうでしょうか。また、虐待には至らない「心身に有害な影響を及ぼす行為」を、通告義務ないし報告義務の対象としないことにも疑問があります。学校の場合、体罰が行なわれたら、生徒が重傷を負ったりした場合でなくても、教育委員会に報告する義務があったように思うのですが。


このあたり、東村山市でも検討して、意見書を採択するなどしてほしいものです。矢野・朝木両「市議」は反対するかもしれませんが。


【資料】児童福祉法改正案抜粋
第六節 被措置児童等虐待の防止等
 第三十三条の十 この法律で、被措置児童等虐待とは、小規模住居型児童養育事業に従事する者、里親若しくはその同居人、乳児院児童養護施設、知的障害児施設等、情緒障害児短期治療施設若しくは児童自立支援施設の長、その職員その他の従業者、指定医療機関の管理者その他の従業者、第十二条の四に規定する児童を一時保護する施設を設けている児童相談所の所長、当該施設の職員その他の従業者又は第三十三条第一項若しくは第二項の委託を受けて児童に一時保護を加える業務に従事する者(以下「施設職員等」と総称する。)が、委託された児童、入所する児童又は一時保護を加え、若しくは加えることを委託された児童(以下「被措置児童等」という。)について行う次に掲げる行為をいう。
  一 被措置児童等の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
  二 被措置児童等にわいせつな行為をすること又は被措置児童等をしてわいせつな行為をさせること。
  三 被措置児童等の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、同居人若しくは生活を共にする他の児童による前二号又は次号に掲げる行為の放置その他の施設職員等としての養育又は業務を著しく怠ること。
  四 被措置児童等に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の被措置児童等に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
 第三十三条の十一 施設職員等は、被措置児童等虐待その他被措置児童等の心身に有害な影響を及ぼす行為をしてはならない。
 第三十三条の十二 被措置児童等虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを都道府県の設置する福祉事務所、児童相談所、第三十三条の十四第一項若しくは第二項に規定する措置を講ずる権限を有する都道府県の行政機関(以下この節において「都道府県の行政機関」という。)、都道府県児童福祉審議会若しくは市町村又は児童委員を介して、都道府県の設置する福祉事務所、児童相談所都道府県の行政機関、都道府県児童福祉審議会若しくは市町村に通告しなければならない。
   被措置児童等虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、当該被措置児童等虐待を受けたと思われる児童が、児童虐待の防止等に関する法律第二条に規定する児童虐待を受けたと思われる児童にも該当する場合において、前項の規定による通告をしたときは、同法第六条第一項の規定による通告をすることを要しない。
   被措置児童等は、被措置児童等虐待を受けたときは、その旨を児童相談所都道府県の行政機関又は都道府県児童福祉審議会に届け出ることができる。
   刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第一項の規定による通告(虚偽であるもの及び過失によるものを除く。次項において同じ。)をすることを妨げるものと解釈してはならない。
   施設職員等は、第一項の規定による通告をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを受けない。
 第三十三条の十三 都道府県の設置する福祉事務所、児童相談所都道府県の行政機関、都道府県児童福祉審議会又は市町村が前条第一項の規定による通告又は同条第三項の規定による届出を受けた場合においては、当該通告若しくは届出を受けた都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所の所長、所員その他の職員、都道府県の行政機関若しくは市町村の職員、都道府県児童福祉審議会の委員若しくは臨時委員又は当該通告を仲介した児童委員は、その職務上知り得た事項であつて当該通告又は届出をした者を特定させるものを漏らしてはならない。