「くさぷぅ〜グループ」の貧困な人間観


柳原滋雄コラム日記「草の根」の闇4 被害者を加害者に仕立て上げる「行動原理」〉には、もう1点、注目しておくべきところがあります。記事の中ほどにある、次のような記述です。

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 同氏〔洋品店店主〕は朝木明代の万引き事件以後も、仕事を通じて複数の万引き犯と接したようだった。一人は警察に突き出した。もう一人は、謝罪し、「買う」といったので許したという。医者の妻だったらしい。「お金がないわけではない。お金で買えばいいのに、と普通の人はみな思う」。朝木明代も同様であったろう。わずか1900円の持ち合わせがないわけではなかったはずだ。

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さらに、まだ多くの人の記憶に残っているのではないかと思われる、三浦和義氏による万引き事件にも触れています。

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 実は、万引き事件については、朝木の事件とよく似たケースがある。最近、ロス移送の決定で話題になっている日本国民ならだれもが知っている人物の起こした万引き事件である。2007年3月、この人物は地元のコンビニ店(神奈川県平塚市)で朝木明代と同じような万引き行為を働いた。盗んだのはサプリメント商品6点、金額にして3632円である。商品がなくなっているとの報告を従業員から聞きつけた店のオーナーが、監視カメラの映像を確認したところ、この人物の犯行が発覚した。店側は警察署に被害届けを提出。一方、この人物は店内の監視カメラで録画されていた歴然たる証拠を突きつけられて、行為そのものはしぶしぶ認めたものの、「忘れていた」などと言い逃れを繰り返し、決して自らの「非」を認めようとはしなかった。最後は、このコンビニ店らを逆に民事提訴するといった行動をとった。

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柳原さんがこの事例を持ち出したのは、一つには、矢野「市議」と三浦和義氏の行動原理が「驚くほどに似通っている」ことを示すためでしょう。しかし同時に、“万引きというのは意外な人物がやるもので、「こんな人が万引きなんてやるはずがない」などと言うことはできない”ということを示唆してもいるのだろうと思われます。


というのも、朝木明代市議「殺害」説に固執する人々からは、いちいち出典は示しませんが、


「明代さんは万引きをするような人ではなかった」
洋品店は明代さんが買い物をするようなお店ではない」
「市議ともあろう人が1900円のシャツを盗むわけがない」


という趣旨の主張がしばしば聞かれるからです。こんな言い草は、しょせん、人間がふとしたときに抱えてしまう“闇”というものを理解できない、底の浅い人間観の表れに過ぎません。
【追記】(10月7日)松沢呉一の黒子の部屋〈「ゼリの根」か「くさぷぅ〜」か〉、資料屋◆bfimNvQTbのブログ〈市議であろうと万引きをするときはする〉も参照。とくに資料屋さんの「万引き犯だと逮捕される方が珍しい」という指摘(文末)にも注目。


自殺についてもそうです。往々にして、“まさか”と思う人が自殺(未遂)をしてしまうもので、だからこそ周囲の人々はしばしば“どうして気づいてやれなかったのか”と自責の念に駆られるのです。「明代さんが自殺などするはずがない」などという“人柄”論は、遺族感情としては理解できますが、自殺を否定する根拠にはまったくなりません。ましてや、このような“人柄”論に基づいて「他殺」説を喧伝することは、自殺者のおよそ7割が遺書を遺していないにも関わらず「遺書がなかった」ことを「他殺」の理由に挙げることと同様(8月24日付〈朝木明代市議転落死事件の「最大の謎」〉参照)、自分の人間観の貧困さを暴露しているようなものです。


そんな貧困な人間観の持ち主が、いくら「彼女朝木直子が嘘をつく筈などなく、我々のシンポジウムでは本当のことしか話していない」などと言っても、鼻で笑われるのは当然でしょう。


この言葉は瀬戸氏のブログの最新エントリー〈【連載】朝木明代元東村山市議殺害事件(19):最後の言葉は「飛び降りてはいない。」〉からの引用ですが、これも、とっくに裁判で検証済みであるはずの資料を、例によって関連の判決(救急隊国家賠償請求裁判など)にはひと言も触れずに、持ち出してくるという体たらく。要するに、朝木明代市議が倒れているのを発見したモスバーガーの店長が「飛び降りたんですか?」と問いかけたら、朝木市議は「飛び降りていない。」と答えたから、「これは『自殺』と考えるのは間違い」で、「少なくとも『落とされた。』という他殺の疑いも非常に濃厚」という主張です。


2ちゃんねる【想像する】瀬戸弘幸氏へのメッセージ【ジャーナリスト】〉では、この記事に対するつっこみはすでに終了して別の議論が展開されていますが(10月5日午前4時現在)、そこでワールドワイドウェブさんが指摘しているように、瀬戸氏はほんの1ヵ月ほど前(9月1日付の記事)には次のように書いていました。

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・・・この〔モスバーガー〕店員は遺族に対しては「落ちたのですかと聞いたら“いいえ”と答えました」と述べているのです。
 「落ちたのですか?」「いいえ」だったら、<落とされた>ということになります。・・・

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落ちたのですか?」「いいえ」だったはずのやりとりが、「飛び降りたんですか?」「飛び降りていない。」ということになっています。批判する相手のブログもまともに読んでいないばかりか、重要な事実として自分で取り上げたネタさえ覚えていないことを明らかにしてしまいました。


そりゃ、たくさん記事を書いていれば、前に書いたことを忘れてしまうこともあるでしょう。しかし、重要な事実であれば、“このネタは前に取り上げたな”というおぼろげな記憶ぐらいはあって、過去ログを見直してみようと考えるのが普通です。しかも瀬戸氏は、翌日のエントリーで次のように訂正を加えているのですよ。

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・・・この店員は遺族に対しては「落ちたのですかと聞いたら“いいえ”と答えました」と述べているのです。
 この“いいえ”と答えた―というのは「違う」とはっきり口にしたというように訂正します。
 「落ちたのですか?」「違う」だったら、<落とされた>ということになります。・・・

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こんなオトボケぶりをさらしておきながら、柳原さんに関する記述を後から書き足して、「いかに創価学会のジャーナリストが嘘を書いているかは、これで皆さんご理解頂けたと思います。彼らが何を書こうがそれは信用できないと言うことです。たぶんこの記事は削除するでしょうね」などと得意げになっています。どうしても柳原さんに法的措置をとってもらいたいようですが、ともあれ、瀬戸氏が何を書こうがそれは信用できないことはわかりました。いまさらですが。


それにしても瀬戸氏は、「週刊現代」裁判*1で、朝木直子「市議」が堂々と「取材は受けていない」などと嘘をついて責任を逃れようとしたことを、本当にご存じないのでしょうか。この件については、瀬戸氏が「以前より注目」していたはずの柳原さんも、かなり前の〈ウソつき市議会議員「朝木直子」の豹変〉(2007年1月11日付)で取り上げています。私も8月24日付の記事で「瀬戸先生も『週刊現代』の二の轍をお踏みになることがないようにご注意を」とご忠告申し上げましたし、松沢さんも、〈お部屋1648/矢野穂積に学ぶ3〉(9月12日付)でかなり詳しく分析しているのですが。


それとも単に、朝木直子「市議」に対する信仰心ないしその他の感情のために、あえて目をつぶっているのでしょうか。何を信じようと勝手ですが、このような経緯を無視して「彼女朝木直子が嘘をつく筈などなく、我々のシンポジウムでは本当のことしか話していない」などと言っていては、“瀬戸氏が何を書こうがそれは信用できない”と、ますます思われるだけですよ。


あ、ちなみに次は龍 年光氏による陳述書を持ち出してくるのかもしれませんが、これはかなり前から「創価問題新聞」に掲載されているもので新味はない上に、「他殺」説を裏づける証拠にはまったくなりませんので、念のため。

*1:地裁・高裁判決全文はポリスジャパン〈現職東村山市議 矢野穂積 の華麗なる裁判歴 その3〉を参照。