やはり不法行為に相当するとしか思えない「訴追請求」
しばらく家を空けている間に瀬戸弘幸がつっこみどころ満載のエントリーを次々とアップするので、追いつくのが大変です。すでに11月8日になっていますが、順番に記事をアップしていきます。
まずは件の「訴追請求状」について。これがいかに異常な代物であるかについては、9月22日付〈矢野・朝木両「市議」も出した?「訴追請求状」〉で触れておきましたが、その首謀者である那田尚史から、瀬戸のところに次のようなメールが届いたそうです(原文の行間は詰めた)。
瀬戸弘幸さま
「裁判官訴追委員会」に電話で問い合わせたところ、普通は訴追請求状が届いて3〜4か月後に結論が出るとのことでした。
それで弾劾裁判にかけることになりますが、裁判官弾劾法を読むと、解散総選挙の後の最初の国会の直後に裁判が行われる、と書いてありますので、来年の1月ごろには例の裁判官3人に処分が出ると思います。
昨日、添付の資料を訴追委員会に送っておきました。
以上、ご報告まで。
一般論として「普通は・・・3〜4か月後に結論が出る」と説明されただけで、
「結論」→「弾劾裁判」→「処分」
と脳内変換できるのですから、那田という人も、こんなメールをすまして転載する瀬戸弘幸も、よくよく幸せな人たちです。
コメント欄でもさっそくつっこみ(Posted by もちろん訴追請求人に非ズ at 2008年11月07日 01:46)が入っていますが、弾劾裁判が行なわれるのは、訴追委員会で「弾劾による罷免の事由にあたる事実があり、弾劾裁判所に罷免の訴追をする必要がある」と認められた場合のみです(弾劾法10条2項)。
そして、「判決の内容など、裁判官の判断自体についての当否を他の国家機関が調査・判断することは、司法権独立の原則に抵触する恐れがあるので、原則として許されません」から、「創価学会からの金銭授与や便宜供与」(訴追請求状)があったことをうかがわせる相当の根拠がないかぎり、訴追委員会が訴追の決定をすることはないでしょう。
しかし、那田が訴追委員会に追加提出した資料は、どうやら判決文の写しだけのようです。その送り状は次のようなものですが、あいかわらず、名誉毀損で訴えられたら勝ち目がなさそうな、むしろ提出者の人格を疑わせるものでしかない文言が散りばめられているだけです(アンダーラインは引用者=3羽の雀。本文の行間も詰めた)。
裁判官訴追委員会 御中
私は今年9月に、東京地方裁判所の裁判官である加藤謙一 杉本宏之 柴田啓介に対する訴追請求状を出した者です。
その請求状の中でこの3名の裁判官が下した国民の司法への信頼を裏切る異常な判決文を引用して示しましたが、今回当該判決文全文の写しを改めて提出いたします。
〔中略〕
この判決文は「狂気」と言えるほどに非論理的で創価学会におもねったものであり、創価学会からの収賄と便宜供与の疑いがあること、これら3名の国賊裁判官が否定した司法解剖鑑定書は明らかに2名の人間が故朝木明代市議をマンションから突き落とした証拠であることについては、先に出した訴追請求状に詳しく書きましたので、ここでは繰り返しません。
この訴追請求は多数の日本国民が強い関心を持って見守っております。
訴追委員の皆様には、この謀殺事件の真相を必ず解明するという強い決意を持って調査されることを祈り筆を置きます。
平成20年11月4日 那田尚史
そもそも、「謀殺事件の真相」解明など、訴追委員会の仕事じゃありませんしね。
ちなみに、那田は「裁判官弾劾法を読むと、解散総選挙の後の最初の国会の直後に裁判が行われる、と書いてあります」とも記していますが、そんなことはどこにも書いてありません。「衆議院議員たる訴追委員及びその予備員の選挙は、衆議院議員総選挙の後初めて召集される国会の会期の始めにこれを行う」(弾劾法5条2項)という規定があり、これが裁判員についても準用されますから(同16条2項)、勘違いしたのでしょう。この程度の法令読解力(矢野「市議」らの好きな言葉)しかない人間が、「異常な判決文」などと騒ぎ立てているわけです。
3名の裁判官もこんな連中は相手にしたくないことでしょうが、司法権の独立を真っ向から踏みにじる行為ですから、名誉毀損で訴えてやるのがむしろ愛国的ではないでしょうか。
なお、橋下徹弁護士(現・大阪府知事)が計800万円の損害賠償を命じられた「光市懲戒請求訴訟」の第1審判決(広島地裁・10月2日)では、次のように指摘されています。弁護士に対する懲戒請求制度と裁判官弾劾制度では趣旨がやや異なりますが、この指摘は今回の「訴追請求状」についても完全に当てはまると言えるでしょう。
また、弁護士法58条1項は、広く一般の人々に対し懲戒請求権を認めることにより、自治的団体である弁護士会に与えられた自律的懲戒権限が適正に行使され、その制度が公正に運用されることを期するものと解される。しかしながら他方、懲戒請求を受けた弁護士は、根拠のない請求により名誉・信用等を不当に侵害されるおそれがあり、その弁明を余儀なくされる負担をも負うこととなる。同項が請求者に対し恣意的な請求を許容したり、広く免責を与えたりする趣旨の規定でないことは明らかである。このことは、虚偽の事由に基づいて懲戒請求をした場合には虚偽告訴罪(刑法172条)に該当すると解されていることからも裏付けられる。
そうすると、弁護士に対する懲戒請求をする者は、懲戒請求を受ける対象者の利益が不当に侵害されることがないように対象者に懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠について調査・検討をすべき義務を負うというべきである。また、懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において、請求者がそのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのにあえて懲戒を請求するなど、懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには、違法な懲戒請求として不法行為を構成すると解される。
ところで、瀬戸弘幸もこの訴追請求状は出したんでしたっけ? 〈皆さんへの協力要請〉(9月14日付)でも「出しました」とは書いてないし、〈公開討論会の呼びかけ〉(9月20日付)でも、「多くの読者に協力をお願いしている以上、私が紹介した方の主張を全面的に支持していることは当然のこと」と書いてはいますが、やはり「私も出しました」とは書いていませんね。
ああ、〈創価学会有利な判断を下した裁判官〉(9月18日付)のコメント欄に、「私は那田先生の訴追請求をそのままでしています」(Posted by せと弘幸 at 2008年09月19日 19:33)と書いてありました。皆さんに協力を呼びかけるのですから、「私も○月○日付で提出しました」と、きちんと本文でお書きになればよろしいのに。
「決定の結果は、訴追請求人に通知します」ということですから、おそらく来年になるであろう結果の報告を待つとしましょう。3名の裁判官が訴えるにしても、それからでしょうしね。