「検事発言」の宣伝は“選挙が近くなるまであっためる”と言う矢野「市議」の真意は ※追記


りんごっこ保育園名誉毀損裁判東村山市の敗訴が確定したそうで、りんごっこ保育園のホームページ(2月20日付)と「東村山市民新聞」トップページ(2月21日付)でさっそく告知されています*1。だからといって現在も問題がないという話にはならず、指摘されているさまざまな問題についてきちんと説明責任を果たしてはどうかと思うのですが、これについてはまたあらためて取り上げましょう。


今日は、矢野「市議」が第4回「政治と宗教を考えるシンポジウム」(2月14日、名古屋)で行なった“選挙が近くなるまであっためる”発言について、その真意を推測してみたいと思います。矢野「市議」は、シンポジウムの最後に、大要、次のように発言していました(全文は文末資料として掲載)。

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・検事は、「告訴から3年間、十二分に捜査した結果、創価学会側(信者)が事件に関与した疑いは否定できない」と言っていた。
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・この発言を公表すると、創価学会から名誉毀損で訴えられたが(『FORUM21』座談会名誉毀損裁判)、名誉毀損ではないという判断が最高裁で確定した。
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・これは創価学会にとっては大変な事態だと思われるので、もうちょっとあっためて、選挙が近くなったら、検事がこのように言っていたことについて市民にも公表していきたい

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この矢野発言については、昨日の記事で、「本当に『朝木明代議員謀殺事件の究明と犯人検挙』に取り組むつもりがあるなら、そしてこの最高裁判決がそれほど決定的なものなら、判決内容の公表を『選挙が近く』なるまで待つ必然性はまったくない」と指摘しておきました。なぜ、矢野・朝木両「市議」はこのような対応をとるのでしょうか。


結論から言えば、高裁・最高裁判決においても、創価学会側(信者)が事件に関与した疑いは否定できない」という検事発言の真実性は(はっきりとは)認定されていないからだと推測できます。矢野「市議」自身、そのような認定が行なわれたと臭わせてはいますけれども、明言はしていない。ただ、“名誉毀損にはならなかった”と述べているだけです。


市議会選挙まで2年以上あるこの時期に、東村山市内でこのような「検事発言」の宣伝をすれば、そこで何らかの情報操作が行なわれていることは速やかに指摘され、市民の間でもそれなりに知れ渡ることでしょう。宣伝のやり方によっては、創価学会から再び提訴されるかもしれない。だからこそ、選挙が近くなるまで「あっためて」、それを防ぐ必要がある。当選さえしてしまえば、あとから情報操作がばれようが、裁判沙汰になろうが、どうとでもなるからです。


このように推測する根拠は十分にありますが、まとめている時間がありませんので、続きはあとで。とりあえず、2008年7月4日付〈所管の「法令理解力」を云々する矢野「市議」に「判決読解力」はあるか(いやない)〉および同11月28日付〈もはや犯罪的な裁判情報の操作と、だまされ続ける側の罪〉参照。


【追記】(2月21日)
さて、「告訴から3年間、十二分に捜査した結果、創価学会側(信者)が事件に関与した疑いは否定できない」という検事の発言は、『FORUM21』2004年1月号に掲載された座談会〈検証―新事実が明らかになった「東村山事件」〉朝木直子矢野穂積乙骨正生)で、矢野「市議」によって明らかにされたものです。


時系列を追ってみていくと、朝木明代市議転落死(1995年9月1日)の直後、『週刊現代』1995(平成7)年9月23日号(9月11日発売)が「夫と娘が激白!『明代は創価学会に殺された』」という記事を掲載したことについて、創価学会は発売翌日に同誌および朝木親子を刑事告訴しました。この記事については民事裁判(『週刊現代』事件)も起こされており、周知のとおり同誌および朝木親子が完膚なきまでに敗訴して、朝木親子も200万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を命じられています(2001年)。


朝木明代市議の転落死事件については、東京地検は「朝木の死亡には自殺の疑いが強く、他殺の確証は得られなかった」などと判断し、1997(平成9)年4月14日に捜査を終結させました(まとめWiki朝木明代市議転落死事件〉参照)。


翌1998(平成10)年7月15日、東京地検創価学会刑事告訴について不起訴処分を決定。矢野「市議」が主張するところによれば、ちょうどこの日、別件で東京地検八王子支部を訪れていた矢野「市議」の眼前で、上記「検事発言」が行なわれたと言います。座談会における矢野「市議」の発言から、該当箇所を抜粋してみましょう。

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・・・7月15日、東京地検は、創価学会が、・・・「週刊現代」と、記事にコメントを寄せた朝木明代さんの夫の大統さん、朝木直子さんを名誉毀損罪で刑事告訴した事件で不起訴処分を決めています。これは私たちが発行している「東村山市民新聞」でも詳報したのですが、ちょうど、この日、私は別件の暴力事件についての被害状況を説明するために東京地検八王子支部に出向き、担当検察官と話をしていたところ、創価学会代理人である井田吉則弁護士から検察官に電話がかかってきました。話の内容は、不起訴の決定に対する不満であり、不起訴にした理由を執拗に問い質すものでしたので注意して聞いていたところ、検察官は、「告訴から3年間、十二分に捜査した結果、創価学会側(信者)が事件に関与した疑いは否定できないということで、不起訴の処分を決めたんですよ」と発言したのです。
 井田弁護士はその後、創価学会に対する別件の裁判に提出した陳述書で、この検察の処分の時期を偽るなどしてそうした会話はなかったと否定しています。しかし検察官は不起訴理由の一つに関与についての疑惑がある旨、指摘しました。・・・

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一見して不自然なところが多すぎます。朝木明代事件については、すでに東京地検によって「自殺の疑いが強く、他殺の確証は得られなかった」という結論が出ているというのに、よりによって矢野「市議」の目の前で、検事がこんなことを言うでしょうか。


また、検事が本当にこのような発言をしていたとすれば、矢野・朝木両「市議」は直ちに大騒ぎをして“再捜査要求”をしていなければならないはずですが、いまのところその形跡は見出せていません。『東村山の闇』(2003年11月発行)には書いてあるのかもしれませんが、なぜ、「検事発言」から6年以上経ってこんな話が出てくるのでしょうか。


新しい「証拠」だの「事実」だのが、はるかな時を経てポツポツと提出されてくるのは、エアフォースの一連の連載を見てもわかるように、朝木明代市議万引き・転落死事件の大きな特徴です。それ自体、この事件の真相を物語っているとも言えるでしょう。


以前にもまとめておいたのですが、この「検事発言」について、創価学会は次のような主張をしています(『FORUM21』座談会名誉毀損裁判における創価学会の訴状より)。


(1)検察官はこのような発言をしていない。
(2)検察官が告げた不起訴の理由は、朝木明代遺族側(大統・直子親子)と『週刊現代』の言い分が食い違っていたこと等から(朝木親子は『週刊現代』の取材を受けていないなどと主張したが、その後の民事裁判で一蹴されている)、嫌疑不十分にしたというものだった。
(3)常識的に考えて、創価学会側(信者)が殺害に関与した疑いがあるのであれば、捜査機関がこの点に関する捜査をまったく行なわないまま「犯罪性はない」「自殺の疑いが濃く、他殺の確証を得られなかった」として捜査を終了させるはずはない。
(4)だいたい、殺害の汚名を着せられたことを理由に名誉毀損罪で告訴した当事者に向かって、検察官がこんなことを言うはずはない。
(5)いずれにしても、上記検察官発言はまったくの作り話である。


この主張の方がよほど筋が通っていると思われますが、矢野「市議」は、この点についてどのような認定が行なわれたのか、まったく明らかにしていません。


紙版「東村山市民新聞」159号(2007年12月15日付)第1面によると、2008年6月17日の最高裁判決の前提となった東京高裁判決(2007年9月26日)では、次のような認定が行なわれたとされています(太字は引用者=3羽の雀)。

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判決は、詳細に記事を検討した上で、事件は「朝木議員の自殺であるとして捜査は終結されたが、その後新たに判明した事実によれば何者かによる『他殺』であり、今後更なる真相究明とともに犯人検挙が望まれる、との趣旨であり創価の名誉を毀損するものということはできない。」と断定した。

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2008年7月4日付の記事でもまとめておいたように、太字の部分は、座談会における矢野「市議」の発言の趣旨を、裁判所が要約したものです。裁判所としては、転落死事件が「他殺」であるとも、ましてやそこに創価学会が関与していたとも、認定していません。


そのような認定が行なわれていたとすれば、それこそ矢野・朝木両「市議」は大騒ぎで宣伝するでしょうから、これ以上に踏み込んだ認定は行なわれなかったと判断するのが妥当です。したがって、上記「検事発言」についても、実際にそのような発言が行なわれたという認定(「検事発言」の真実性の認定)は行なわれなかったと見て間違いないでしょう。


矢野「市議」は、上記「検事発言」をめぐる自分の発言が(かろうじて)名誉毀損と判断されなかったことをもって、上記「検事発言」そのものを“事実”であるかのように宣伝しようとしているのだと思われます。だからこそ、多摩レイクサイドFMで自分が持っている番組では「各方面にきわめて重大な影響を与える」とか「どういった真相だったのかということを考える大きな手がかり」などと吹きつつ、今に至るまで高裁・最高裁判決そのものを公にしようとしないのでしょう。


何しろ、朝木明代市議の万引き・自殺ともに“その可能性は相当高いが、断定するだけの材料はない”と認定した『潮』事件判決を、判決のごく一部だけ恣意的に抜き出して「他殺」の決定的根拠として宣伝してきた人たちです。1・29東京高裁判決によってこれが誤読であることを厳しく指摘されても、いまなお〈朝木議員謀殺関係訴訟結果報告〉リストには「判決理由が『万引き・自殺』を否定。実質勝訴で敗訴判決控訴せず」などと書いています。


したがって、上記「検事発言」についても同様の虚偽宣伝を行なおうとしていることは、十分に考えられる。それを“選挙が近くなるまであっためる”ということは、「朝木明代議員謀殺事件の究明と犯人検挙」などよりも、自分の政治生命の延命こそが重要なのだと判断されてもしかたがありません。


何しろ、「謀殺事件」は2010年9月で時効を迎えますが、翌2011年4月には東村山市議会選挙が行なわれます。“残念ながら時効を迎えてしまいましたが、真相究明のための活動は続けます!”とやるには、ぴったりのタイミングです。瀬戸サンをはじめとする「謀殺」派がコケにされるのは自業自得ですが、有権者をコケにするこのような態度は、許されたものではありません。これが邪推であると言うならば、『FORUM21』座談会名誉毀損裁判の地裁・高裁・最高裁判決の全文を、速やかに公表していただきたいものです。


なお、ひょっとしたら“選挙というのは都議選・衆院選のことだ”という反論があるかもしれませんが、どっちにしても時期が迫っているのですから、とっとと公表するべき筋合いの話です。だいたい、衆院選は昨年10〜11月に行なわれるのではないかという観測もあったのですから、とっくに公表していてもおかしくはない。したがって、矢野「市議」が念頭に置いている「選挙」とは、やはり次期東村山市議会選挙と見るのが当然でしょう。



【資料】第4回「政治と宗教を考えるシンポジウム」(2月14日、名古屋)における矢野「市議」の最後の発言
動画(その4)の22分40秒あたりから。

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えーと、それではですね。このお集まりもそろそろおしまいのようなんで、せっかく後ろにも朝木明代議員の事件についてですね、幕が張ってありますから、その件に関して、今のご質問に重なればと思い、ちょっとだけお話ししておきます。


えーと、1995年平成7年の9月1日に朝木議員は東村山の駅のロータリーに面した、ビルの上層階から落とされて殺害されたんですが、この1995年の9月の真中から後にですね、実は『週刊現代』という講談社が出している週刊誌は皆さんもご存じだと思うんですが、この週刊誌がですね、朝木議員の夫の朝木大統さん、この直子さんのお父さんなんですが、えー、が語った言葉として、「明代は創価学会に殺された」というタイトルで、記事を何ページかにわたって掲載したんですね。


えー、そうしましたら、創価学会は、それまで自分たちのことを批判されても、例の『月刊ペン』事件というのがありましてね、池田大作氏のその下半身の問題を、いろいろと言われた事件で、結局は実質的に負けちゃったということがあって、法廷で争ったり、あるいは告訴するということで、決してその、必ずしもですね、自分たちのためにはならない場合もあるということを学習したらしくて、あまり週刊誌とかそういうものに対してその告訴とか提訴をするということをしなかったんですね。


で、そのために週刊現代はさらにイケイケで書いちゃったんですが、そうしたらその直後にですね、創価学会がまずこれを刑事告訴しました。それから民事提訴もしたんですが、この刑事告訴した件に関して、3年余りたちまして、98年の7月にですね、東京地検は不起訴の処分を出したんです。


つまり、週刊現代は名誉棄損罪にはあたらない。当然ですね、週刊現代だけではなくて、夫の朝木大統さんも直子さんも告訴されていたんですが、全員が不起訴になりました。


で、そのことについてですね、実は非常に偶然だったんですが、その1998の7月に不起訴の処分を出した当日の夕方、私は、東京地検の八王子支部に自分が被害を受けた、創価学会の信者に、私が乗っていた自転車がですね、挟まれてつぶされそうになった事件とか様々ありましてですね、1995年の事件ですが、朝木さんの事件の前ですけれども、その件について八王子支部で検事に事情を聴かれて調書をつくってたんですね。


その時に創価学会代理人の井田という弁護士から、その処分をした検事に電話がかかりまして、どうも午前中に処分を発表したらしいんですが、そのことを聞きつけた創価学会側が、冗談じゃない、ふざけるな、ということで、かなりの勢いで、このー検事に対してですね、要するに注文をつけてきたんですね。なんで不起訴なんだ、こんな、明代は創価学会に殺されたと書いてあるのにこれが名誉棄損罪にあたらないでなんなんだという勢いで一生懸命言ってました。


で、私が検事の前で机の前に座ってその話を、やり取りを聞いていたんですが、最後にですね、電話をそこで検事が受け取ったこと自体が、どうも私に聞いてもいいよということだったようです。


それで最後に言った言葉が、検事はえー、3年間十分に、えー捜査をした結果、創価学会の関係者、信者だったと思いますが、事件に関与した疑いは否定できない、というふうに、ということで、不起訴の処分にいたしました、ということを、私に聞こえるように言ったんです。


で、この話は皆さんもびっくりしたと思いますが、これをですね、実はさっき寺本議員さんが紹介していただいた本を書いた、本の中で私が紹介をしたり、その後そのー、『フォーラム21』という創価学会問題を扱っている雑誌の編集発行人とこの3人で対談をした時に、今のお話を紹介したんです。で、記事として『フォーラム21』の中に書いてあったんですね。


そうしたら今度は、その記事を創価学会が民事提訴をしてきたんです。ところが一審は、えー、私が検察官から聞いた話は信用できないという理由で、私どもが名誉棄損を犯したということで敗訴になったんですね。ところが東京高裁に控訴したところ、これが全く逆に逆転勝訴という結果になりました。


で、このことでですね、何が問題なのかというと、検察官から聞いたお話が、嘘だというふうに創価学会は言ったわけですね、嘘だと。そして、これは、創価学会が朝木明代議員を殺害したように受け取れる、そういう印象を一般読者に与えることになるから、これは明らかに違法行為は成立している、名誉棄損である、ということで主張したのが、一審では一応認容されたんですが、高裁ではひっくり返って、えー退けられたということです。それが、昨年の6月17日に確定をいたしました、最高裁で。


で、このことでですね、創価学会はそれ以後、私どものことはほとんど言わなくなりました。そのかわり、当時東村山警察の副署長だった千葉という人物と、創価学会系のライターの人物が二人一組になってですね、一生懸命裁判を行なうと言ってます。


その中でですね、変な裁判も最近出ているんですが、えーポイントは、えー朝木議員が万引きを苦にして自殺というような虚構を一生懸命情報操作してるんですが、いずれもですね、この万引きについても、真犯人の服装と、朝木議員の服装が違うということが明らかになっておりますし、それから、朝木議員の遺体の上腕の内側の残った皮下出血を伴ってるアザがですね、これは、えー他人が、他人と争った跡であるという、法医学者の鑑定書がありますので、そういった二つの点から、彼らの主張が誤りだということも明らかにできるということで、えーいろんな判決が出ておりますが、最高裁で確定した先ほどのご紹介しました判決について、えー紹介をするとともにですね、えーこれは創価学会にとっては、大変な事態ではないかということで、えーと、東村山で私ども小さい地域新聞を出しておりますが、えーもうちょっとあっためて、選挙が近くなったらですね、このことを公表して、今申し上げたようなことについて、検察官は、えー朝木議員の事件に、えー創価学会の関係者が関与した事実は否定できないということが言われているということについてですね、市民の皆さん含めて、公表していきたいというふうに思っております。

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*1:なお、「東村山市民新聞」トップページでは他に、「創価問題」の横にあった謎の「治」が消されるとともに、「宇野経済学の復権を」(降旗節雄氏の業績評価)が「宇野経済学の再生、復権を」に修正されている(2月18日付の記事参照)。【追記】りんごっこ保育園の件については〈訴訟経過報告〉のページにも報告が追加された(「訴訟3」および〈朝木議員謀殺関係訴訟結果報告〉E(7)の2箇所)。なお、〈発行人と編集長〉のページは書体を変えたかっただけの模様。