「月刊タイムス」事件判決をめぐる記述の興味深い変遷


東村山市民新聞」の4月20日付更新については、昨日付の記事に追記しておきました。次から次へと新たな話題が出てきますが、松沢さんが取り上げたこの件については私がいまさら触れるまでもないでしょうし、瀬戸サンの「前科前歴」問題については、私が一番ききたかったことを荒井さんがさっそく公開質問という形で突きつけてくれましたので、しばらく様子見します。


というわけで、昨日付の記事で報告した加筆部分の次の箇所について、検討を済ませておきましょう。

                                                                                                            • -

 すでに、あの創価系ライターは昨年3月7日に、裁判長からじきじき面と向かって「月刊タイムス事件判決確定の05年5月13日以降は『朝木明代議員は自殺した』と断定する記事を書いてはいけません」、とはっきりと強く注意を喚起されており、しかも、裁判長は裁判長の「注意喚起」をメモすることを認めているのです。

                                                                                                            • -


これは「名刺広告強要事件」における和解が成立した際の話なのですが、2008年3月16日付〈どうみても負け惜しみ?〉などで指摘した通り、和解条項に含まれていない裁判長発言には法的効力はありません。「メモすることを認めて」もらったというのは新しい話ですが、だから何だと言うのでしょうか。


また、もう一方の当事者である宇留嶋さんによると、ここで言及されたのは『潮』事件判決であり、裁判長の発言も少しニュアンスの異なるものだったようです。宇留嶋さんによれば、このとき交わされたやりとりは以下のようなものでした。


矢野「朝木明代の転落死について『潮』判決で『自殺を裏付ける証拠はない』とされているのだから、『万引きを苦にした自殺』という表現をやめてほしい」
裁判長「『潮』判決でそうなっているのは事実ですが、どうですか。その後なにか新しい事実が出てくれば、『万引きを苦に自殺』と書いてもいいと思いますが」
宇留嶋「明代の事件は本件とはなんら関係がない。それに『潮』判決でも『自殺の証拠はない』といっているだけで『他殺』と認定されたわけではない。裁判官の見解としてはわからないではないが、それを和解条項に書くと矢野と朝木はそれをもとに『他殺』という虚偽宣伝に使うことは目に見えているので、和解条項として入れることは容認できない」


朝木明代転落死事件については『潮』事件でも『月刊タイムス』事件でもおおむね同旨の認定が行なわれていますし(後述)、そもそも法的な意味はない話ですから、まあどっちでもいいとしましょう。


興味深いのは、この裁判長発言をめぐる矢野・朝木両「市議」の表現が徐々に変遷してきていることです。順番にご覧いただきましょう。


(1)〈創価擁護記事ライター実質敗訴で幕!2008年3月15日付

                                                                                                            • -

・・・裁判所が創価擁護記事ライターに対してはっきりと「『朝木明代議員が自殺した証拠はない』と断定し月刊タイムズの敗訴が最高裁で確定した判決の後は、『朝木明代議員は自殺した』とは書くことはできませんよ」と指摘をした・・・

                                                                                                            • -


(2)〈警察捜査結果(自殺)を否定した最高裁確定判決と警告を受けた「ライター」(2009年2月26日付3月27日付

                                                                                                            • -

すでに、最高裁でこのライターの敗訴が確定した「月刊タイムズ」訴訟では、「万引き苦に自殺」の虚構について審理を尽くした上で、警察捜査結果からは「自殺」は推認できず、他に朝木明代議員が自殺したとする証拠はない、と断定しています。つまり、最高裁確定判決は、「自殺」とはいえないのに「自殺」だとした元副署長が指揮した捜査結果を信じたことの責任は追及できないが、客観的真実として「警察捜査結果」からは「自殺」とはいえないとの判断が明示されておりだとされており、最高裁確定判決は「自殺」を否定しているのです。「自殺」を否定したこの最高裁確定判決以後は、このライターは、東京地裁八王子支部裁判長からも「最高裁確定判決以後に『自殺』などと記述してはいけません」と直接言われていますから、「××汚染」というこのライターの出版物の主要な柱が確定判決で否定されているということもお伝えしておきます。

                                                                                                            • -


(3)4月20日付加筆部分(再掲)

                                                                                                            • -

 すでに、あの創価系ライターは昨年3月7日に、裁判長からじきじき面と向かって「月刊タイムス事件判決確定の05年5月13日以降は『朝木明代議員は自殺した』と断定する記事を書いてはいけません」、とはっきりと強く注意を喚起されており、しかも、裁判長は裁判長の「注意喚起」をメモすることを認めているのです。

                                                                                                            • -


一見して気づくのは、(2)のタイトルで用いられている「警告」という表現が、(3)では「注意喚起」へと後退していることです。また、裁判長の発言内容も微妙に変わってきています。


「『朝木明代議員は自殺した』とは書くことはできませんよ」
  ↓
「『自殺』などと記述してはいけません」
  ↓
「『朝木明代議員は自殺した』と断定する記事を書いてはいけません」


要は「断定」しなければ問題はないということです。矢野・朝木両「市議」も、『月刊タイムス』事件判決が「『自殺』を否定」したものなどではないことを、ようやく認めたということでしょうか。


実際、「『自殺』を否定」などしていないのですから、当たり前ですね。矢野・朝木両「市議」が地裁判決全文(PDFファイル)を公表してくれたことにより、ようやくそのことが確定しました。該当部分を引用しておきましょう(判決書34頁、太字は引用者=3羽の雀)。

                                                                                                            • -

 前記(3)イで認定した現場の状況、亡明代の死亡直前の言動、死体の状況及び関係者の供述を総合考慮すると、亡明代が自殺したことを裏付ける事情が存在することは確かである。
 しかしながら、他方で、証拠(甲5、25、乙44)及び弁論の全趣旨によれば、司法解剖の結果、亡明代の左右上腕内側部に皮膚変色が認められたこと、亡明代の事務所の鍵が、平成7年9月2日夕方になってから、本件マンションの2階踊り場付近で発見されたこと、亡明代の靴がいまだに発見されていないこと、亡明代が同年8月において本件窃盗被疑事件が冤罪であると主張して徹底的に闘う決意を表明していたことが認められ、これらの事実に照らせば、なお亡明代が自殺したと断じるにはなお疑問が残るところであり、上記亡明代が自殺したことを裏付ける事情をもって、自殺を推認するに足らず、他に亡明代が自殺したと認めるに足りる証拠はない。

                                                                                                            • -


要は、「亡明代の死因が自殺であるとみる余地は十分にあるというべきである」と認めながら「なお亡明代が自殺したとの事実が真実であると認めるには足り」ないとした『潮』事件判決と同趣旨ですね。なお、「前記(3)イ」とは判決書24〜27頁に掲載された事実認定で、基本的には他の一連の裁判で行なわれた認定内容と同様です。
【追記】(4月22日)「東村山市民新聞」で「真実性」云々の話が書かれていましたので公正を期すために注記しておきますが、朝木明代市議が「万引きを苦に自殺」したという記述については、その可能性があることは認定されつつも、真実性が認められるには至っていません。4月22日付〈やっぱり「『自殺』を否定」したわけでも「他殺」を認定したわけでもない『潮』『月刊タイムス』判決〉参照。


一方、『潮』事件判決については、矢野・朝木両「市議」は依然として「判決理由が『万引き・自殺』を否定」と虚偽宣伝を続けています。何度も言っているのですが、1・29東京高裁判決でも


明代が万引きをし、万引きを苦にして自殺したことは同判決で否定された旨の〔、〕控訴人らが出版した書籍・・・〔引用者注:『東村山の闇』〕の記述は、当たらない


とはっきり指摘されているのですから、いい加減で訂正してはいかがでしょうか。


ついでに、『月刊タイムス』事件の判決要約を、1・29東京高裁判決からあらためて抜粋しておきましょう(改行および太字は引用者=3羽の雀。また、丸付数字はカッコ付数字に修正)。『月刊タイムス』・宇留嶋さん側が敗訴したのは「何度か明代の万引き癖が噂されたことがあったということを内容とする記事及び明代関係事件とは直接関係のない事柄に関する記事」のみであることにご注意ください。この「明代関係事件とは直接関係のない事柄に関する記事」についても、いずれ取り上げる機会があるでしょう。

                                                                                                            • -

i 本件別訴(いわゆる月刊タイムス事件)において、平成15年11月28日、おおむね上記a、b等の事実が認定され、雑誌記事の一部(何度か明代の万引き癖が噂されたことがあったということを内容とする記事及び明代関係事件とは直接関係のない事柄に関する記事)について被告出版社、編集・発行人及び執筆者に名誉毀損による不法行為責任の成立が認められたが、明代関係事件については、
(1)同被告らにおいて、明代が本件窃盗被疑事件の犯人であると信じたこと、明代が虚偽のアリバイ主張をし、控訴人矢野が虚偽のアリバイ工作に関与したと信じたこと、明代が控訴人矢野の関与のもとに主張していたアリバイも虚偽であることが判明し、本件窃盗被疑事件を苦に自殺したことが真実であると信じたこと、控訴人矢野が明代の自殺を偽って他殺であるとけん伝したと信じたことにいずれも相当の理由がある
(2)Tが本件窃盗被疑事件の犯人は明代に間違いないなどと話したことは、自ら認識している事実をそのまま話したもので、Tの勝手な思込みや不注意といった過失があったとは認められない、
(3)被控訴人の明代関係事件についての広報は、捜査結果を踏まえた結果であり、その職務を執行するについての注意義務に違反した違法はない
などとして、その余の控訴人ら及び朝木大統の請求をいずれも棄却する旨の判決がされ、被告出版社の控訴棄却、上告棄却及び不受理決定がされて確定した。

                                                                                                            • -


ちなみに、1月31日付〈東京高裁に“判決の誤読”を厳しく指摘された矢野・朝木両「市議」〉でも指摘したように、『潮』事件判決・『月刊タイムス』事件判決とともに「他殺」の決定的証拠として宣伝されてきた第1次FMひがしむらやま事件判決も、「本件転落死が殺人事件であるとしたものでない」(1・29東京高裁判決)ことは明らかです。そして、1・29東京高裁判決は「本件転落死が殺人事件であると認めることは到底できず、他にこれを認めるに足りる証拠はない」と明確に指摘した。自殺説が「破綻」したなどと強弁している場合ではありませんね。


ところで、明日22日(水)は東村山市議会の臨時会が開かれるそうですね。千葉vs西村裁判の第3回口頭弁論も立川の方で行なわれることになっており、「徒党を組まないと裁判所にも行けない保守」の皆さんはそっちに街宣しに行くようですから、市民も安心して傍聴に足を運べるのではないでしょうか(3月5日付〈市民の傍聴を抑制しかねない「草の根」広報マン〉参照)。