なぜか汐見稔幸氏を敵視する矢野穂積「市議」は保育の質に関してどのような「立場」に立っているのか


りんごっこ保育園グループが3月3日付でホームページに掲載した「お知らせ」には、
「専門学校や短大など保育士養成機関にまで本園に対する同様の態度を続けているようです」
という気になる一節もあります。そもそも日本語として成立していないので意味がよくわからないのですが、矢野穂積「市議」が平成21年12月定例会で次のように述べていたことと関連する話でしょうか。

 で、お伺いしますがね、私は、いずれその児童育成部会の一部の考え方、それから、所管の職員の中にある一部の考え方について、きちんと批判をするつもりです。その前に、りんごっこ保育園、私も多少の関係ありますので、(不規則発言あり)それで、白梅、何というんですか、学園というんですか。この汐見さんという方が、市の主催の研修会で、保育指針の新しいのについて研修会の講師をやったことがあって、そこにりんごっこ保育園の保育士が出かけて、聞いてきたんです、話を。さっぱりよくわからない。その趣旨が全く不明だということを言ってまして、私も話を全部聞いてみて、そうだなと思いました。この話は、またいずれ、きちんと批判します。
 白梅との関係を、どっぷり二人三脚でやるのであるとすればですね、いろんな問題が出てくる。余り一方に、偏ったというのは言い過ぎかもしれないけど、一方の立場に立っている関係者との意向というか、考え方に沿って、行政を運営するというのはどうかと思いますから、しっかり言っておきます。


「りんごっこ保育園、私も多少の関係ありますので」という発言についてはすでにつっこみ済みなので流しておくとして、ここで名前を出されている「汐見さん」というのは、白梅学園大学学長・汐見稔幸氏のことです。2008年10月1日にオープンした東村山市子育て総合支援センター「ころころの森」(運営・学校法人白梅学園)のセンター長も務めています。


その汐見氏のことがどうも目障りでしょうがないらしいのですが、何がどう問題なのかがわからない。「一方の立場」というのは、いったいどのような立場のことなのでしょうか。


矢野「市議」の苛立ちを理解する上でヒントになりそうなのが、同じ平成21年12月定例会における、佐藤まさたか市議の次のような発言です。

 きのう〔12月6日〕の午前中ですけれども、私は、当市の子育て総合支援センター、ころころの森の運営を担っている、今も御紹介しましたが、白梅学園大学の汐見学長の話を聞いてきました。同大学の、「第15回白梅保育セミナー いま保育に問われていること」、保育の質を考えるという集まりでした。
 汐見学長は、ことし4月に9年ぶりに改定された保育所保育指針の趣旨は、一言で言えば、保育の専門性を上げるということであり、たくさん預かってほしい、もっと詰め込んでほしいという要求が強まっている今だからこそ、保育の質の向上が極めて重要な課題であるとして、基調講演を始められました。

このセミナーについて、佐藤市議はブログでも〈「ガイドライン」策定の値打ち〉として触れています。汐見氏は「子どもの未来と保育の広がり深まり〜保育の質的向上の課題とは〜」という題名で基調講演を行なったそうですが、矢野「市議」のいう「市の主催の研修会」というのはまた別の話なのかもしれません。


汐見氏については、やはり平成21年12月定例会で保育問題を取り上げた保延市議も、次のように言及しています。

・・・先日、白梅学園の汐見学長が、待機児の解消には、保育所をふやす以外にない、その努力をしないで、既存の保育所に詰め込んでも問題は解決しないと述べているのを読みまして、全くそのとおりだと私は思ったわけですが、これについての見解を伺います。


お2人の質問の文脈も踏まえれば、汐見氏は、保育の質を犠牲にするような闇雲な規制緩和や民営化には慎重な立場で、何よりも“子どもたちのための保育”を重視している方だと考えることができるでしょう。同氏が代表を務める臨床育児・保育研究会は、昨年10月22日に〈子どもの発達を保障する保育の最低基準を守ってください〉と題する緊急アピール(PDFファイル)を発表しましたが、そこには次のように書いてあります(太字は引用者=3羽の雀)。

 保育所の環境が実際にどうあれば子どもの育ちにふさわしいかは、本来国が責任を持って明らかにし、その水準を全国隅々の保育所において確保するために国が努力を費やさなければならないものだと考えます。そのために児童福祉施設最低基準という法がありますが、これは昭和23年に策定されたものであり、その後面積など設備基準については全く改善がありません。
〔中略〕
 このように、現行最低基準は、望ましい保育環境を用意する基準としては必ずしもふさわしいものとなっているわけではないことが、明らかになっています。国は、こうした調査結果を参考に、わが国の保育所環境の改善を行い、環境面からのセーフティネットをつくることが責務になっていると考えます。
 しかし、今回の地方分権改革推進委員会の勧告では、この基準を国が設定してそれを守ることを要求する責務をなくし、基準の設定そのものを自治体に移すということが目論まれています。さまざまな行政を地方に委譲すること一般は重要なことと思いますが、それは、一定の基準を国が設定して、それを守るというセーフティネットをきちんとつくった上でのことでなければ、自治体財政次第では、基準が現行よりも低下する可能性が否定できません。勧告には、子どもの育ちを保障するという視点が全くないことが、私たちにはとても気になります。子どもたちは、さまざまな困難を待ち受けているこの日本の将来を担う人材なのです。その初期の育ちをより豊かに保障しようとするのではなく、逆の方に向かう可能性がある施策を採ることは、時代の要請に逆行しているといわざるを得ません。待機児の解消ということはもとより重要なテーマではありますが、数の論理を優先して質の論理を放棄することは、重大な禍根を残すことになりかねないと危惧いたします。


矢野「市議」は、このような考え方を「一方の立場」と呼んでいるのでしょうか。矢野「市議」が保育の規制緩和に大賛成であり、そのために東村山市私立保育園設置指導指針(ガイドライン)を敵視してきたことはすでに明らかですが、矢野「市議」は、それではいったいどのような「立場」に立っているのでしょうか。


この点、平成21年12月定例会で矢野「市議」が次のように述べていることもヒントになりそうです。

 ・・・新しい連立政権が、時限的、地域限定的な待機児対策として、一定の施策を展開しようとしてるわけであります。いろいろと針小棒大に考えてる向きもあるようでありますが、先ほどの発言を聞いてると。そうではなくて、東京都の認証保育所制度、A型、B型とありますが、認証保育所の制度というのは、待機児をカウントするときに、認可、認証、保育ママ、これが待機児外というか、待機児にはならなくて、保育サービスを受けてるというふうに見るわけでありますから、当然、認証保育所についても、保育サービスを受けてるという認定を受けるわけですが、このB型については、既に3.3平米ではなくて、一、二歳が、2.5平米になっていますね。こういったことについて、自分がその前提にしている認証保育所の制度を否定するようなことはないと思いますが、新政権の時限的、地域限定的な待機児対策について、どのように考えてるか伺っておきます。


「いろいろと針小棒大に考えてる向きもあるようでありますが、先ほどの発言を聞いてると」という言葉は、佐藤市議があくまでも保育の質重視の質問をしたことを指していると思われます。また、認証保育所B型に対してより低い保育面積基準が適用されていることを引き合いに出し、「自分がその前提にしている認証保育所の制度を否定するようなことはないと思いますが」と釘を刺していることも、規制緩和と保育の質の問題に対する矢野「市議」の基本的考え方を明らかにしていると言えそうです。


ともあれ、事業者であるNPO法人「林檎の木」の理事・監事を務める矢野穂積・朝木直子両「市議」朝木「市議」は保育問題を担当する厚生委員会のメンバーでもある)には、この点についてきっちりと見解を明らかにしていただく必要がありそうです。保育の専門家を自認して佐藤市議を罵倒してきた矢野「市議」ですから、「またいずれ、きちんと批判します」などと言わず、すぐにでも御高説を開陳してくださることでしょう。ただし、他園で起きた死亡事故を引き合いに出して大騒ぎするだけの下劣な対応では説明をしたことにはなりませんので、念のため。


これに関連して、矢野「市議」らが次のように書いていた件ですが。


東村山市議会12月定例会 速報
 佐藤、まだ、例の保育園認可の事前協議用「ガイドライン」にしがみつこうとするも、裁判所の見解をふまえた市側の「ガイドラインには法的拘束力はない。」との答弁で一巻の終わり!しかも、市長も「ガイドラインによる協議が不調でも、書類が整っていれば意見書は書きます」と答弁、でケリ。


1月11日付〈やっぱり根拠がなかった「ガイドライン」=「違法な参入障壁」論と、りんごっこ保育園分園計画〉で、
「これはどう見ても矢野『市議』の質問に対する答弁ですね」
「どうして、自分が質問したことによってりんごっこ保育園に関連する答弁を引き出した事実を隠そうとするのでしょうか」

と指摘しておいたのですが、いちおう平成21年12月定例会の会議録を確認してみたところ、やっぱりそうでした。


しかし所管や市長の答弁を見ていると、矢野「市議」らが書いている内容とは少々ニュアンスが違いますね。


子ども家庭部長ガイドラインにつきましては、今まで培われてきました東村山市の保育水準の維持・向上を図るために策定されており、法的拘束力はございませんが、保育事業者に対しまして、東村山市の保育に対する考えの基礎であるとの指導、並びに助言等を行うものでございます」
市長ガイドラインが不調の場合、意見書を提出しないのかということですけれども、保育設置等の書類を東京都へ申達する際に、市が作成し、添付しております意見書につきましては、保育事業者が提出した書類等に不備がなければ、法令に従いまして、粛々と提出をいたしております。しかしながら、東村山市と保育事業者の認証保育所設置等に関する事前協議につきましては、行政、保育事業者、市民が一体となって、今まで培われてきた東村山市の保育水準の維持・向上を図るため、指導等を行っているものでございますので、保育事業者の皆様につきましては、ぜひ御協力をいただきたいと考えております」
市長ガイドラインにつきましては、当然、法令に基づく最低の部分というのはあるわけですけれども、より保育の質を高めていく努力をしようということから、保育関係者、市民の皆さん、議会、そして、行政で取りまとめてもらったものが、ガイドラインだと考えているところでございます。当然、繰り返し申し上げることになりますが、法的な拘束力はないというのは、私どもも十分認識いたしております。ただ、こういう形で我々が策定したものでございますので、ぜひ事業者の皆さんにも御協力をお願いしていきたいと考えております」


1月11日付の記事でも指摘したように、いちいち誤魔化してないで、
“りんごっこ保育園は、ガイドライン(東村山市私立保育園設置指導指針)に基づいて市と協力するつもりなどない!”
とはっきり宣言すればよろしいんじゃないですか。それが保護者等のご安心につながるかどうかは、存じませんけれども。