京都朝鮮学校襲撃事件初公判:支持者・支援者の(無)反応を振り返る


東村山市議会・秋水園リサイクルセンター計画調査特別委員会が開催されましたが(2月3日)、珍しく東村山市民新聞即日更新はありませんでした。その前日、3日ぶりに「最終更新日」が2月3日付に修正されただけです(2011/02/02 19:28:44)。とうとうネタが拾えなくなったのでしょうか。


さて、2月1日付エントリーにも追記しておきましたが、京都朝鮮学校襲撃事件の初公判(徳島県教組襲撃事件との併合審理)については、傍聴したaramasanさんが詳細な傍聴記をアップしてくれました。詳しくはそちらをじっくり読んでいただくとして、まずは、児童ら約170人がいた朝鮮学校前で被告人らが何を叫んだのか、起訴状に基づいてあらためて確認しておくことにしましょう。


「日本人を拉致した朝鮮総連傘下朝鮮学校、こんなもんは学校ではない」
都市公園法京都市公園条例に違反して50年あまり、朝鮮学校はサッカーゴール、朝礼台、スピーカーなどなどのものを不法に設置している。こんなことは許す事はできない」
北朝鮮学校のスパイ養成機関。朝鮮学校を日本から叩き出せ」
「門を明けてくれ、設置したものを運びこんだら我々は帰るんだよ、そもそもこの学校の土地も不法占拠なんですよ」
「戦争中男手がいないところに、女の人をレイプして虐殺して奪ったのがこの土地」
「ろくでなしの朝鮮学校を日本から叩き出せ。なめとったらあかんぞ。叩き出せ」
「わしらはね、今までの団体のように甘くないで」
「早く門を開けろ」
「戦後焼け野原になった日本人につけこんで民族学校、民族教育闘争ですか。こういった形で至る所で土地の収奪が行われている」
「日本から出ていけ。何が子供じゃ、こんなもん、おまえ、スパイの子供やないか朝鮮ヤクザ
「不法占拠したとこやないかここは。おまえらがな日本人ぶち殺して、ここの土地奪ったんやないか」
「約束というのは人間同士がするもんなんですよ、人間と朝鮮人では約束は成立しません」


京都弁護士会会長声明(2010年1月19日)で引用されていた「お前らウンコ食っとけ、半島帰って」「キムチくさいねん」等の言葉が挙げられていませんが、これは被告人以外の参加者が叫んだ言葉なのかもしれません。初公判では、このときの様子を収めた動画が徳島県教組襲撃事件の動画とともに流され、裁判官らがこわばった顔をしていたということです(コメント欄では、他の傍聴者から「証拠動画を見ていた時の被告たちは時折ニヤけていました」とも指摘されています)。


 


4人の被告人が揃って無罪を主張したことも、aramasanさんの傍聴記や報道にある通りです。これについては近いうちに判決で決着がつくのを待てばいいとして、被告人らの支持者の見解も一通り出揃ったようなので、主な記事を紹介しておきます*1


このほか、在特会京都支部・主権回復を目指す会・排害社が公判前に裁判所近くで行なった街宣と、在特会奈良支部が公判後に京都駅前で行なった街宣の動画もアップされています。「ここが変だよ在特会(仮)」のbubkaさんがそれぞれつっこみを入れていますので、そちらからご覧いただくのがよいでしょう。金友隆幸も前掲ブログ記事で概要を紹介していますが、西村修平
ワールドカップで日本を勝利に導いた李忠成選手の父は、在日も日本のために戦えといっている。反日を繰り返す在日朝鮮人は彼の爪の垢でも煎じて飲め!」
と叫んでいたという話には、いろいろな意味で呆れさせられました。


いずれの記事でも共通しているのが、すでに3人について執行猶予付有罪判決が確定している徳島県教組襲撃事件について、併合審理の対象であるにも関わらず、一切触れていないことです。中谷良子元被告人(クロエ、懲役2年・執行猶予5年)が他人事のように傍聴を呼びかけていることについては2月1日付エントリーでも触れておきましたが、今回のエントリーでも同様でした。


仲間だから、庇っているとかそういうのはないです。彼らの言動や、人への接し方には確かに問題はあったかと思います。一般人から見れば『こんなのただの騒音じゃん!迷惑かけてるのは日本人のほう!』と思われる人も多いでしょう。
しかし、戦後今まで悪事を働いてきたのは朝鮮人なのです。私個人は、『朝鮮人』だからといって差別したりしません。暴言を吐くこともありません。実際に韓国人や中国人にも良い人はいます。身近に、そういうお友達もいます。
(改行は適宜修正)


やはり徳島県教組襲撃事件で有罪判決(懲役8カ月・執行猶予4年)を受けた通称・慶次郎元被告人も関西排害社の一員として公判前の街宣に参加しており、反省している気配をうかがうことはできませんが、それでも徳島県教組襲撃を堂々と正当化することは憚られるということでしょうか。


とりわけ西村修平・主権回復を目指す会代表は、同事件について
私的施設に押し入り、制止を無視してトラメガで咆吼する、受話器を取り上げ通話を妨害する、書類などをまき散らすなどなど、全て現行犯で逮捕されていたはずである
という評価をしていただけに、いまさら「不当逮捕」などと騒ぐことはできません。その後、徳島県教組襲撃事件初公判(2010年11月17日)時の街宣報告
「被告らは告発の方法が逸脱して法に触れたとはいえ、そのリスクを冒して社会の不正義を世に告発したのである。この大義を誰も否定することは出来ない」
「被告らは法治主義国家の国民として、法に触れた行為に関しては粛々と司法の裁きを受け入れるだけであり、我々は犯罪行為を告発した大義を断固として支持するものである」

と弁護していましたが、であれば、今回も言論の妨害・弾圧」「不当逮捕などと騒がずに「粛々と司法の裁きを受け入れるだけ」にしておけばよろしいかと思います。


京都朝鮮学校襲撃を弁護する主張についてはとりたてて取り上げるほどのこともなく、前述の通り判決を待てばいいだけの話ですので、詳しくはつっこみません。日本の自存自衛を取り戻す会の記事では、争議中の労働組合員による威力業務妨害について違法性を認定した最高裁判決を引き、京都朝鮮学校襲撃は同ケースとは事情が異なるとして擁護を試みていますが、最高裁判決は、労働組合員らの行為が関係者に与えた心理的影響(「右の騒ぎのため出演者らは心理的影響を受け、表情を固くし、アナウンサーすらも平常の落着きを失つてその声がうわずるほどであつたというのであつて」)も考慮しつつ、
「被告人らの行為は右争議の目的と掛け離れ〔ている〕
「また、そのような行動に出なければならなかつたことを首肯させるに足りる事情があつたものと認めることはできない」

などとして違法性を認定していますので、むしろ検察側の主張を補強するものにしかならないと思われます。


しかし、有門大輔が次のように書いている点には注意を喚起しておく必要があるでしょう。

 間もなく京都まで赴いて裁判を傍聴した主権回復を目指す会の西村代表より詳細な報告がなされると思うが、特筆すべきは問題の勧進橋児童公園を管轄する京都市の管理課が「同公園の奪還・解放を口実にした団体関係者の言動は行き過ぎたものだが、朝鮮民族学校が五十年以上にわたって不法に占拠していたことは事実である」とする意見が法廷で読み上げられたことだろう。
(有門大輔ブログ〈京都/朝鮮学校裁判をこう見る〉、太字は原文ママ)


aramasanさんがぬかりなく報告・考察してくれていますが、京都市公園管理課員の証言は実際には次のようなものであったようです。


「使用許可も与えてないのにもらったと錦の御旗のように騒ぐ在特会も悪いが、50年に渡りグラウンドを使用してきて近隣住民の変化に気づかず現実に対応してこなかった朝鮮学校が一番の原因だと思います」


aramasanさんが指摘するようにこの証言にもいろいろ疑問点がありますが、少なくとも「朝鮮民族学校が五十年以上にわたって不法に占拠していた」などと証言しなかったのは明らかだと思われます。P2Cさんがだいぶ前に指摘していたように、公園等の「使用」「占用」「占有」はそれぞれ異なる概念であり、有門および在特会はこの点を意図的に曖昧にしてきた(あるいは違いを理解する能力や理解しようとする姿勢がそもそもない)と考えざるを得ません。このあたりについても判決で厳しく断罪されることを期待したいものです。


なお、初公判前日に「当日は・・・裁判 行われます」と街宣告知のついでのように触れていた桜井誠・在特会会長は、公判後は裁判と無関係の記事をアップするばかりでこの件に触れようとしません。時折捨て台詞をかます程度の擁護しかできなくなった瀬戸弘幸サンも、
「昨日『主権回復を目指す会』の西村修平代表より連絡があって、在特会・主権回復を目指す会の関西メンバーが逮捕された朝鮮学校事件の公判で全員が無罪を主張したということでした」
論評抜きで触れるに留まっていました(追記:その後、2月5日の夜に〈朝鮮学校の「勧進橋児童公園」不法占拠事件(1):不法占拠を告発した勇気ある日本人が裁かれるという不当性〉というエントリーをアップしました。この事件を正面から取り上げた記事としては、昨年9月9日の略式命令の際に何度か触れて以降、およそ5カ月ぶりということになります)。


凪さんの観測によれば次回公判(2月7日)で論告求刑・結審へ進むことも難しいのではないかということですが、ともあれ引き続き公判の行方に注目したいと思います。


〔この記事は2月4日の午後アップしたものです。〕

*1:【追記】その後、西村斉被告人の陳述書(投稿番号4)もアップされました。