在特会が放った「山本太郎氏ら告発」という特大ブーメラン


東村山市民新聞は例によって「最終更新日」が修正されただけでした(10月28日付、2011/10/27 20:20:59)。


一方、会の趣旨とはまったく関係なく「反・反原発」活動に勤しんできた在特会が、今度は俳優の山本太郎氏を告発したということで、ネットでも早速話題になっています



よく知られているように、山本太郎氏ら数名はすでに京都の行政書士によって7月に告発され、[http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110922/crm11092200120000-n1.htm:title=その告発が佐賀地検によって受理された]と9月に報じられていました。告発を行なった行政書士は、その経緯を次のように説明しています(この記事はその後ブログごと削除された模様)。


7月11日に反原発団体が佐賀県庁に「突入」(マスコミの表現)した事件がありましたが、ご記憶にございますでしょうか?「突入」した人物の中に俳優の山本太郎氏がいたことで、大きく報道されました。
このニュースを見て、私は大変な怒りを覚えました。少し前に同じようなことをやった在特会が摘発されたのは記憶に新しいところですが、本事件では捜査機関が捜査を着手したという報道もなされていないことから、7月14日に佐賀地検に告発状を郵送しました(7月22日に一部訂正した告発状と証拠も補充して再送しました)。
(太字は引用者=3羽の雀)


自称桜井誠・在特会会長は、在特会佐賀支部による告発についての続報で、この件に触れて次のように述べています。



「現地のニュースでは佐賀の問題で京都の行政書士が送付した告発状が却下され、在特会が準備した告発状が受理されたとのことです」と言うのですが、在特会佐賀支部が10月26日(水)に在特会公式サイトに掲載した報告には、次のように書いてありました。


10月24日(月)告発状の提出の報告
佐賀地方検察庁に「山本太郎」等の 県庁襲撃 に対する(告発状)を提出してきました
「受理」の有無は後日わかり次第報告いたします
〔後略〕
(文字強調は引用者=3羽の雀)


話が全然違いますね。


自称桜井会長は、かつて在特会が日教組に対して行なった告発について、実は「日教組が募金活動を行った『日時、場所、方法』の具体的犯罪行為の特定が不十分」という理由で受理されなかっただけなのに、
「徳島県警の言い分は、日教組は大きな組織なので手に負えないと説明した」
などと虚偽の説明をしていました(3月1日付〈徳島県教組襲撃に一切の正当性がなかったことを自ら進んで明らかにしてしまった在特会〉参照)。


何やら特定民族が「息をするように嘘を吐く」などとしばしば述べている自称桜井会長は、これまでも、実際には怪我人が出なかった事件について
「爆発物を投げ込まれて怪我人を出しております」
と国連に報告したり(2010年4月3日付〈無知とウソで塗り固めた「在特会」反論書面(1):「子供に向けられたものでない」などという見苦しい言い訳〉の後半参照)、
「朝鮮学校を支援する反日左翼側は民事訴訟を提起し、左翼運動展開のために敢えて訴訟を長期化させる戦術を取っています」
などと適当なことを言ったりということを繰り返しています(2010年11月15日付〈【在特会横浜デモ】山下公園訪問の目的をめぐる参加者ブログの興味深い改変〉も参照)。意図的な嘘というより、その場を取り繕うための適当な発言が結果的に虚偽になってしまうというケースが多いようですが、もう少し自分が発する言葉に責任を持つよう心掛けた方がいいでしょう。無理でしょうけど。


そういえば、小沢一郎の政治資金規正法違反容疑をめぐって検察審査会に異議申立てを行ない、
この申し立ては2月5日付で検察審査会事務局に受理され、来週明けに受理通知が届くそうです
と書いておきながら、実際には却下されていたということもありましたっけ。



まあ2件の告発がどう扱われるかは今後の展開を待つとして、とりあえず[http://www.zaitokukai.info/modules/wordpress/index.php?p=350:title=在特会佐賀支部による告発状の内容]をテキスト化しておきましょう。

第1 告発の趣旨
被告発人らの下記所為は、次に該当されると思料されるので、被告発人の厳重な処罰を求めるため告発する。

罪名及び罰条

強要未遂  刑法第223条3項、同60条
公務執行妨害  刑法第95条、同60条
傷害  刑法第204条、同206条、同60条
暴行  刑法第208条、同60条
建造物侵入  刑法第130条、同60条
威力業務妨害  刑法第234条、同60条
被告発人山本太郎につき〔墨塗り〕


第2 告発事実
〔墨塗り〕平成23年7月11日、佐賀県佐賀市〔墨塗り〕所在、佐賀県庁を訪れ、
1 〔墨塗り〕太鼓様のものを打ち鳴らし拡声器を以って大声をあげ、罵声を浴びせるなどして同庁舎内の平穏を害し、職員や、県民など他の来庁者の自由が著しく害される不安を覚えさせる方法をもって、佐賀県知事に対し面会を強要し
2 〔墨塗り〕同庁舎の管理者たる佐賀県が、「庁舎管理のため制限せざるを得ない」として庁舎の正面玄関を含む多くの出入り口を封鎖し被告発人の庁舎立ち入りを明白に拒否したにもかかわらず、制止した佐賀県職員及び佐賀県より依頼を受けた警備員を羽交い絞めするなどして傷害または暴行し
3 〔墨塗り〕正当な理由がないのに同庁舎内へ侵入し、要求を受けたにもかかわらず同庁舎内から退去せず
4 〔墨塗り〕太鼓様のものを打ち鳴らし、大声をあげ、罵倒を繰り返すなどして、威力を用いて人の業務を妨害した者である。


第3 立証方法
〔全面墨塗り〕


第4 添付資料
前記証拠


おやおや、これではどうしたって徳島県教組襲撃事件をめぐる有罪判決を思い出してしまいますね。


第3 被告人西村斉、同荒巻靖彦及び同川東は、N、H、Oらと共謀の上、あしなが育英会等に寄付するとして集められた募金の中から徳島県教職員組合が学校法人愛媛朝鮮学園四国朝鮮初中級学校に支援金を渡したとして糾弾するなどして同組合の正常な業務を妨害する目的で、平成22年4月14日午後1時15分ころ、徳島県教育会館2階同組合事務所内に、「日教組の正体、反日教育で日本の子供たちから自尊心を奪い、異常な性教育で日本の子供たちを蝕む変態集団、それが日教組」などと記した横断幕、日章旗、拡声器等を携帯して、「詐欺罪。」などと怒号しながら侵入した上、そのころから同日午後1時28分ころまでの間、約13分間にわたり、同事務所において、同組合の業務に係る事務をしていた同組合書記長T及び同組合書記Mの2名を取り囲み、同人らに対し、前記横断幕、日章旗を掲げながら、拡声器を用いるなどして、「詐欺罪じゃ。」「朝鮮の犬。」「売国奴読め、売国奴。」「国賊。」「かわいそうな子供助けよう言うて金集めてね、朝鮮に150万送っとんねん。」「募金詐欺、募金詐欺じゃ、こら。」「非国民。」「死刑や、死刑。」「腹切れ、お前、こら。」「腹切れ、国賊。」などと怒号し、「人と話をするときくらいは電話は置き。」「置けや。」などと言いながら前記Tの両腕や手首をつかむなどして同人が110番通報中であった電話の受話器を取り上げて同通話を切った上、同人の右肩を突き、「朝鮮総連と日教組の癒着、許さないぞ。」「政治活動をする日教組を日本から叩き出せ。」などとシュプレヒコールするなどした上、机上の書類等を放り投げ、拡声器でサイレン音を吹鳴させるなどし、前記事務所内を喧噪状態に陥れて同組合の正常な業務を不能ならしめ、もって同事務所に正当な理由がないのに侵入した上、威力を用いて同組合の業務を妨害した。


1 (中略)
 判示第3の行為について、弁護人らは、正当な政治的抗議であり、建造物への侵入はしていないし、業務妨害行為も存在せず、又は違法性がないなどと主張する。しかし、その行為は、狭隘な事務所に16名の者が押し入って職員2名を取り囲んだ上、約13分間にわたって拡声器を用いて大音量で怒号するなどし、被害者の腕や手首をつかんだり右肩を突き、机上の資料を放り投げたりサイレンを鳴らすなどしたものであって、許容される余地のない態様のものであり、このような態様による抗議への対処が組合業務の一環であるなどとは到底いうことはできず、事務所への立入りが承諾されたと考える余地はない。このことは、前記事務所が存在する建物の受付において立入りを制止されなかったこと等の弁護人らが主張する事情があっても変わるところはない。
2 以上のとおり、被告人らの判示各行為は、いずれも正当な政治的表現の限度を逸脱した違法なものであると認められ、そのことは臨場した警察官が制止措置を講じなかったといった事情を考慮しても変わるところはなく、故意や違法性の意識及び可罰的違法性の主張等の点も含め弁護人らの主張はいずれも採用できない。
(量刑の理由)
1 (中略)判示第3の犯行は、狭隘な事務所に16名で侵入し、横断幕等を示すなどして多数の威力を示し、2名の女性職員に対し、判示のとおり、拡声器等を用いて大音量で一方的に罵詈雑言を浴びせた上、職員の手首や腕をつかんだり机上の資料を放り投げるなどの実力行使にまで及んだものであり、その態様は悪質である。それにより、被害者らの業務が現実に妨害されたのみならず、被害者がその間に抱いた恐怖心や屈辱感は大きいものとうかがわれ、その結果にも重いものがあり、被害者が強い被害感情を示しているのはもっともである。そうであるのに、被告人らは、公判廷でも本件各行為は正当であったと述べるなど反省が見られない。


細かい状況の違いはさておき、徳島県教組襲撃が、山本太郎氏らが佐賀県庁で行なった行為よりもはるかに悪質であることは明らかだと思われます。山本太郎氏らに「厳重な処罰」を求める在特会佐賀支部は、西村斉・在特会京都支部長、川東大了・同副会長らの即時解任・除名を要求するべきであり、今回の告発を支持する自称桜井会長もそのような対応をとるべきですが、それができないのが愛僕無罪の在特会クオリティということでしょう。


なお、いつのことだったかはっきり覚えていないのですが、西村斉は、深夜のニコ生で京都の行政書士による告発の件に触れ、活動というのはああいうものだという趣旨のことを述べて山本太郎氏らの行動を一定程度容認していました。今回在特会佐賀支部が行なったような告発が自分に直接突き刺さるブーメランであることは、流石に理解していたようです。


ともあれ在特会は、募金詐欺とやらを口実とする徳島県教組襲撃に一切の正当性がなかったことを明らかにしたのに続いて、組織として、同襲撃の犯罪性・不法行為性を自認したことになります。今後予想される民事裁判においても、このことは重要な考慮事項のひとつになりそうです。