「襲撃する運動」が野放しにされている状況こそ「世界の非常識」


4月1日(木)は東村山市民新聞の更新はありませんでした。一方、請願潰し裁判で全面敗訴した矢野穂積・朝木直子両「市議」は控訴したそうです。文句があるなら、自分達が「公人たる市議としての適格性」矢野穂積・朝木直子両市議に対する辞職勧告を求める請願)を有していることを行動によって証明すればいいと思いますが、それは無理だから市民を法廷に引きずり出すことしかできないのでしょう。悪あがきをしても、「超党派でつくる新聞」裁判「パラノイア」裁判における司法認定をますます裏付ける結果になるだけだと思いますよ。


さて、国連人権理事会・移民(移住者)の権利に関する特別報告者ホルヘ・ブスタマンテ氏が、9日間の訪日調査を終えてプレスリリースを発表しました(3月31日付)。その中で、ブスタマンテ氏は次のような指摘を行なっています。

国籍に基づく人種主義及び差別意識は、日本に未だ根強く、職場、学校、医療施設、住宅などにおいて見られる。国連の人種差別撤廃委員会が勧告で示したように、外国人住民を人種又は国籍に基づく差別から、効果的に保護する規定が、憲法や現行の法律に欠けているため、人種差別の撤廃と防止のための特別な法整備が求められる。


「国籍に基づく」というのは原文では "based on nationality" ですから、ここでは「民族に基づく」と訳す方が適切でしょう。国籍の有無に基づく異なる取扱いは、それが合理的なものである限り、人種差別撤廃条約等でも認められています


ブスタマンテ氏の見解は、〈日本では人種主義と差別が広がっている:国連使節Racism and discrimination common in Japan: UN envoy)という見出し(AFP配信)で、世界中のニュースサイトにも掲載されました。瀬戸サンがいくら私は日本社会に民族差別は存在しないという立場などと言い張っても、そんな言い草は通用しません。


それなのに、自分達の民族差別的・排外主義的言動が「世界の常識」などと恥ずかしい主張をしてしまうのが、瀬戸サンの弟子である有門大輔です。

 今回の〔3・28京都〕デモについても相変わらず、その表現を問題視する向きがある。在日朝鮮人を害虫や寄生虫に擬えたものだが、「共生」を口実にありとあらゆる権利を要求するのだから、そのように擬えられたとしても致し方あるまい。
 それをやたら差別だ、差別だという謂われなき批難であるわけだが、そもそも朝鮮人を好きになろうが嫌いになろうが、それらは個人の自由であり権利である。
 自宅へ無制限に支那人(中国人)や朝鮮人を招き入れるのも個人の自由意思であり権利であるが、支那人であるとか朝鮮人であることを理由に交流の一切を拒絶するのも個人の自由意思であり権利だ。
 勿論これを国の法律や社会制度として行なうことは出来ないが、個人においてさえ認められるはずの好き嫌い(差別)が通らなくなってしまったのが現在の日本社会である。それを声高に主張しているのが一般市民が集う「行動する保守」改め「行動する社会運動」である。
 公においては在日朝鮮人を一般の外国人と等しく扱う合理的区別を、個人においては「支那人が嫌いだ」「朝鮮人が嫌いだ」と主張する当然の権利を求めるものだ。
〔中略〕
 ・・・柳生氏は著名な保守学者の著書を引用し「個人としての人種差別は容認される」とした上で、その実例として「米国にはタイガー・ウッズでさえ練習することが許されない白人専用のゴルフクラブがあり、これには左翼も何も言えない」と述べる。…日本もそれくらい世界各国の常識が当てはまる国なら言うことはない。
(有門大輔ブログ〈世界の常識に鑑みても当然の運動推進を!〉)


どうやら、個人の枠を超えて「国の法律や社会制度として」外国人を差別することはよくないとわかっているようです。ちなみに「白人専用のゴルフクラブの件ですが、法的にその存在が許されていても、たとえば公職候補者がそんなクラブに関係していたことがわかったら米国では大問題になることぐらい、“white's only country club”で検索してみればすぐにわかります。


もちろん、有門達が求めてきたのは、個人的な好き嫌いを表明する自由、個人的交流範囲を自ら決定する自由だけではありません。外国人が日本で権利保障や生活向上のための主張・運動を行なう自由すら否定し、そのような主張・運動を行なう外国人を「不逞」外国人と決めつけて日本から「叩き出す」ように要求しているのです。


分が悪くなると常に誤魔化しに走るのは瀬戸サンを始めとする襲撃する運動関係者の一大特徴ですが、あまりにもみっともないので、いい加減にやめた方がいいでしょう。3・28京都デモで西村修平が何をわめいたか、もう一度振り返ってみましょうか。

860 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2010/03/30(火) 15:02:28 ID:tMHpgKMaP
http://www.youtube.com/watch?v=uc-bfQrXBxc#t=5m30sあたりから少し文字おこし 全部西村
くぅやしいくぅやしい思いをしてた朝鮮ウジ虫はとっととかえれええええぇ〜〜〜
日本の疫病神、癌、ウジ虫、ゴキブリは〜〜ストップ!
朝鮮人が集まってきたのでわざと車を停止させて煽るために止めさせたと思われる。
一人残らず朝鮮半島にたたき出せ〜〜 たぁたきだせぇ〜〜
一人残らずゴキブリをたぁたきだせぇ〜〜 キムチ野郎をたぁたきだっせぇ〜〜〜!
キムチゴキブリをたぁたきだせぇ〜〜!!!
日本列島のダァニ!ゴォキブリ!ウゥゥジ虫をたぁたきだせぇ〜〜!!

(後方でもみ合い発生)
えぇ!朝鮮総連をただちに排除してください!排除しろよぉ!くぁswで3f4rtg5yふじk!!!
たぁだちに朝鮮総連の暴動を排除しろぉぉぉ!
○○
(←聞き取れない)に襲いかかる朝鮮総連をたぁたきだせえええ!
一人残らずたたき出せ−!朝鮮ウジ虫ゴキブリをたたき出せ−!
くぅやしいくぅやしいゴォォキブリ、朝鮮半島に帰れぇぇえ!
ゴォキブリ!ウジ虫!朝鮮に帰れぇぇ!

(このあたりから冷静さのかけらも見えなくなり、いやらしさ全開で煽り出す)
くやしいくやしい朝鮮人は、金正日のもとへかえれえええ!
京都をキムチのにおいにまみれさせてはいけない!
ゴキブリ朝鮮人!とっととうぅぅせろおおおぉぉう!
(←失せろって意味ね)
日本で差別され、えぇくうぅやしいくうぅやしい朝鮮人は、ひぃいとり残らず朝鮮半島にかえれええ!
太った豚野郎!キムチと豚の食い過ぎ!ふとっちょ朝鮮人、帰れぇぇ!
豚の出来損ない!朝鮮人
(←声が裏返ってくる)
豚のなり損ない!脂肪のかたまり!朝鮮人朝鮮半島に帰れ−!
(太めの朝鮮の人に向かって)君はね、朝鮮半島のね、北朝鮮の収容所でみっちり強制労働すれば君の健康のためになるよ!


たとえばアメリカでこんなことを公然と叫べば、州によっては直ちに刑事罰の対象となる可能性が高い。つい最近、こんな事件がありました。

ウォルマート店内の「黒人は出て行け」放送、16歳少年を逮捕
(CNN) 米ニュージャージー州の警察は〔3月〕20日、小売り大手ウォルマート店内で「黒人は全員店を出て行け」と放送したとして、16歳少年を脅迫容疑などで逮捕したと発表した。
事件は14日午後5時ごろ、同州ターナーズビルのウォールマートで発生。男の声で「黒人は全員店を出て行け」と店内放送が流れため、店長が警察に通報ししていた。アトランティック郡在住の少年が逮捕されたのは19日。
ウォルマートによると、店舗内の放送は店内にある電話のどこからでも利用が可能だった。
ウォルマートには苦情も寄せられ、本社側も捜査に全面協力していると説明。事件が起きた店舗では店内放送に使える電話を制限することに決めた。また、全米に展開する約4000店でも、再発防止に向けた対策を検討する。


米紙の報道によれば、この少年の逮捕容疑は「嫌がらせ」と「偏向的脅迫」です。ニュージャージー州刑法の規定を見てみましょう。

2C:33-4. 嫌がらせ(harassment)
 他人に対する嫌がらせの目的で次のいずれかの行為を行なった者は、・・・秩序違反の軽罪とする。
a. 匿名で若しくは極端に不都合な時間帯に、又は不快なほど粗野な言葉遣いで、又は不快感若しくは恐怖心を引き起こす可能性が高いその他の方法で、1回又は複数回の通信を行ない若しくは行なわせること。
b. 他の者を殴打し、蹴り、乱暴に押し若しくはその他の不快な接触の対象とし、又はそうすると脅かすこと。
c. 他のいずれかのやり方で恐怖心を引き起こすような行動をとり、又は他の者に恐怖心若しくは深刻な不快感を与えるための行為を繰り返し行なうこと。


「嫌がらせ」は基本的に軽犯罪ですが、これが次のような状況下で行なわれた場合、「偏向的脅迫」として、より重い第4級犯罪となります。

2C:16-1. 偏向的脅迫(bias intimidation)
a. 偏向的脅迫。・・・〔嫌がらせを始めとする特定の〕犯罪を実行するか、実行しようとするか、その実行にあたって他の者と共謀するか、又はそのような犯罪を直ちに実行すると脅した者は、次のいずれかの条件が存在する場合、偏向的脅迫罪とする。
(1) 人種、皮膚の色、宗教、ジェンダー、障害、性的指向ジェンダーの自認若しくは表出、民族的出身またはエスニシティを理由として個人又は個人の集団を脅迫する目的がある場合。
(2) 当該犯罪を構成する行為が、人種、皮膚の色、宗教、ジェンダー、障害、性的指向ジェンダーの自認若しくは表出、民族的出身またはエスニシティを理由として個人又は個人の集団が脅迫を受けたと感じることにつながると承知している場合。
(3) 背景となる犯罪のいずれかの被害者が脅迫を受けたと感じ、かつ、当該被害者が、当該犯罪が行なわれた態様を考慮して次のいずれかのように考えることが合理的である状況が存在する場合。
  (a) 当該犯罪は、人種、皮膚の色、宗教、ジェンダー、障害、性的指向ジェンダーの自認若しくは表出、民族的出身またはエスニシティを理由として、当該被害者、又は当該被害者がその福祉に関心を有するいずれかの者若しくは存在を脅迫するために行なわれたものである。
  (b) 当該被害者又はその財産が犯罪の対象として選ばれたのは、人種、皮膚の色、宗教、ジェンダー、障害、性的指向ジェンダーの自認若しくは表出、民族的出身またはエスニシティが原因である。
〔中略〕
h. 被害者の人種、皮膚の色、宗教、ジェンダー、障害、性的指向ジェンダーの自認若しくは表出、民族的出身またはエスニシティに関する被告人の錯誤は、この条に基づく犯罪の訴追に対する抗弁とはならない。


というわけで、京都朝鮮学校襲撃事件はもとより、池袋・中華系商店襲撃事件も、ニュージャージーなら間違いなく犯罪として立件されるでしょう。


前嶋和弘「ヘイトクライム〔憎悪犯罪〕規正法とその問題点」によれば、アメリカでは1968年「連邦保護活動法」(KKK法)に加え、1990年「ヘイトクライム統計法」、1994年「ヘイトクライム判決強化法」などが連邦レベルで制定されています。また、2000年夏現在、41州が何らかの憎悪犯罪関連法を有しているとのことです。昨年(2009年)10月29日に連邦レベルで憎悪犯罪の定義が拡大され、性的指向等を理由とする行為も対象とされるようになったことは、日本でも話題になりました。


アメリカは人種差別撤廃条約第4条について日本と同様に留保を付していますが*1、それでも憎悪を背景とした犯罪行為には厳しい態度で臨んでいるということです。イギリスも同様に第4条を留保していますが、2006年に「人種的・宗教的憎悪法」を制定して規制を強化しました。その他、何らかの形で憎悪犯罪に関する規定を設けている国は少なくありません


また、ヨーロッパでは「コンピューター・システムを通じて行なわれる人種主義的・排外主義的性質の行為の犯罪化に関するサイバー犯罪条約の追加議定書」(2003年)に採択され、2006年に発効しています(現在フランスなど17カ国が加入)。


このような状況を鑑みれば、主権回復を目指す会在特会のような団体による粗暴な振舞いが野放しにされている日本の状況こそ、「世界の常識」に反していることは明らかです。それにどのように対応していくかについてはいろいろな議論がありますが、このまま襲撃する運動の連中が暴れ回るのであれば、直ちにヘイトスピーチを犯罪化しないまでも、憎悪犯罪という考え方を日本の法体系にも導入すべきだという声はますます強まっていくでしょう。それが嫌なら、少しは「世界の常識」を学ぶことです。


〔この記事は4月2日の午後にアップしたものです。〕

*1:人種差別撤廃条約第4条の全部または一部について留保または解釈宣言を行なっている国は、条約加盟国173カ国のうち20カ国(アンティグアバーブーダ、オーストラリア、オーストリアバハマ、バルバドス、ベルギー、フィジー、フランス、アイルランド、イタリア、日本、マルタ、モナコ、ネパール、パプアニューギニア、スイス、タイ、トンガ、イギリス、アメリカ)。