私益のための引っかけ質問はそろそろやめましょう


今日も「最終更新日」の修正だけなので、いまさらながら、矢野穂積創価学会の批判に呼応した東村山市議会の運営を判決が痛烈批判」(『FORUM21』2008年5月号、「東村山死人シンブン市民新聞」に〈行政部判決と「りんごっこ保育園」の現状〉として転載)を検証してみました。


りんごっこ保育園の運営委員を務める現職市議が書いたこの駄文は、
「保育園の開園妨害や運営妨害の背後には、創価学会本部の意図が働いている」
〔りんごっこ保育園に設備改善等を求めた〕附帯決議の中心となった公明市議らの動きは、創価本部ぐるみだ」
などと決めつけ、その「動かぬ証拠」として、「聖教新聞」2003(平成15)年4月23日付第4面に掲載された座談会を抜粋しています。〈行政部判決と「りんごっこ保育園」の現状〉にも資料として掲載されていますが、レイアウトが乱れていて読みにくいので、あらためてここに載せておきましょう。なお、座談会で参照されている月刊誌(月刊タイムス)についてよけいな注釈がついていますが、それも削りました。

【資料】「創価学会本部ぐるみ」の動かぬ証拠
(「聖教新聞」2003(平成15)年4月23日4面記事より関係部分抜粋)
奇怪極まる騒動
原田 そういえば最近も東京の東村山市で、保育園に絡んだ問題が、マスコミざたになっているな。
杉山 月刊誌でも大々的に報道されていた。何でも、市内の保育園の新設計画が市議会で問題になった。
佐藤 ところが、だ。年間約8000万円もの補助金が出る予定の保育園だというのに、議会や保育関係者には一切、報告もなし。なぜか役人の独断専行で、コッソリ計画が進められていたというんだな。
原田 それだけ多額の公金が使われるということは、一種の公共事業じゃないか。それを議会にも何も知らせないなんて、おかしいじゃないか。
杉山 当然、議会が厳しく追及した。ところが市の役人は“まだ計画が固まっていない”の一点張り。事業者の名前どころか、保育園の名前すら言おうとしなかったと言うんだ。
青木 誰が見たって奇怪千万だな!
佐藤 その後、驚くべき事実が発覚した。この保育園の事業主というのが、何と、ある市議会議員の関係者だったというんだ。
杉山 市議会で問題となった時も、この市議の一派だけが、なぜか、大騒ぎだった。
佐藤 月刊誌〔も〕「不透明というよりも、むしろ不正行為に近い決裁までの経過」等と厳しく糾弾していた。
原田  いや、誰が聞いても不可解極まる話だ。


松沢呉一さんがすでに指摘しているように、こんなものは何の証拠にもなりません。『月刊タイムス』の記事をもとに一般論を語り、憤慨しているだけ。まともな、というより普通の読解力の持ち主であれば、こんなものを「動かぬ証拠」として嬉々として持ち出してくる矢野「市議」の神経に首をひねることでしょう。


ところが、矢野「市議」は市議会にまでこの座談会の件を持ち出しているのですな。『FORUM21』の駄文には、次のように書かれています。

私が市議会決算委員会で、この箇所を指摘し「この記事は事実か」と質したところ、市側は「そのような事実はありません」と明確に答弁し、「聖教新聞」記事がデタラメであることははっきりした。公明市議らもこの衝撃的な質疑応答を聞いていたが、ヤジを飛ばすことなく静まりかえっていた。


はいはい、議事録を調べてみましたよ。平成16(2004)年11月4日の決算特別委員会ですね。またずいぶん時間が経ってから取り上げたものです。以下、抜粋(太字は引用者=3羽の雀)。

○矢野委員 (中略)これおもしろい新聞があって、創価学会の出している聖教新聞ですが、この中に昨年度の話ですよ、「ところが」というのがあって、これは聖教新聞の4面って有名な、人の悪口をいっぱい書いているところですが、佐藤という青年部長のようですが、この人が、これは去年の4月23日付の4面ですよ。この佐藤という人が何て言っているかというと、「年間約8,000万円もの補助金が出る予定の保育園だというのに、なぜか役人の独断専行でこっそり契約が進められたというんだな」と書いてあるんですよ、これは本当ですか。役人が、つまりあなた方が勝手に独断専行でやったと書いてあるんですけれども、本当ですか。事実を確認しておきます。
△柿沼保健福祉部長 そういうことはございません。
○矢野委員 わかりました。少なくとも与党会派には相談したり協議したりしていると理解していいわけですよね。私は聞いてなかったんですけれどもね。佐藤委員、何か困ることでもあるのかね。
△柿沼保健福祉部長 答弁は差し控えさせていただきます。
○矢野委員 差し控えるというところで、そうだったと理解しておきます


人の悪口しか書かない“新聞”の発行人が「聖教新聞の4面って有名な、人の悪口をいっぱい書いているところですが」などと言っているのも微笑ましいのですが、それはさておき。


まず、「役人が、つまりあなた方が勝手に独断専行でやったと書いてあるんですけれども、本当ですか」という質問がとぼけています。りんごっこ保育園開設までの動きに、矢野・朝木両「市議」が黒幕・黒子として関わり、秘密裡に事を進めさせようとしていたことなど、エアフォース「りんごっこ保育園問題とは何か」(第1部)の、とくに第3回以降を読めば明らかなとおり。2003年2月に児童育成部会に提出した文書(文末に追記あり)も、高野園長本人が書いたものではなく、まず間違いなく矢野「市議」が代筆したものであることまで、ばらされちゃいましたしね(エアフォース「りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)第15回)。


そのうえ、矢野「市議」は、「独断専行」を否定した保健福祉部長の答弁を勝手にふくらませていきます。


少なくとも与党会派には相談したり協議したりしていると理解していいわけですよね
そうだったと理解しておきます


おかしいですね。『FORUM21』の件を島田市議(公明)が市議会で取り上げ、「不穏な動き」云々のことを市は把握しているのかと質したときには、矢野「市議」は次のように述べています(〈たまらず自分で尻尾をだしてしまった創価・公明〉)。


仮に知ってても、示しあわせて動いた関係者が職員の中にいるのだから、『知っておりました』などというはずもない


ということは、「独断専行」の件についても、「仮に独断専行であっても、そんなことを認めれば大問題になるのだから、『独断専行でした』などと認めるはずもない」と理解するのが自然ではないでしょうか。まったくご都合主義のかたまりみたいな人ですな。


そもそも矢野「市議」は、自分に有利な解釈ができそうな答弁を引き出すために、事前通告していなかったことを抜き打ちで尋ねたり、所管として答えようがない質問をあえてしたりすることが多すぎます。その一例は、6月14日付「公益そっちのけで『佐藤市議バッシング』に市議会を利用する矢野・朝木両『市議』」でも紹介しておいたとおり。


しかもその“有利な解釈”というのがたいていは妄想ですから、話にならない。バレバレの手口は、そろそろおやめになってはいかがでしょうね。


【追記】当初、エアフォース「りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)第15回で取り上げられている文書は2003(平成15)年2月10日の市議会厚生委員会に高野博子園長名義で提出された文書のことだと思っていたのですが、よく読むと違ったようです。エアフォースの連載第2部・第8回には「2003年2月18日付高野署名文書」への言及があり、そちらの文書のことと思われるので、本文の記述を修正しておきました。こちらはまだ全文公開されていないような気がしますが、おそらく内容が似たり寄ったりのため、全文公開の必要はないと判断されたのでしょう。