在特会デモ後に起きた暴行事件はマスメディアのせいだと筋違いな非難をする瀬戸弘幸


外国人参政権断固反対!国民大行進IN新宿」の終了後、少年が参加者に催涙スプレーのようなものを吹き付けて逮捕された件については、時事通信産経新聞毎日新聞でも報じられました。スタンガンも用いられたというデモ参加者の報告があることは、昨日付の記事に注記しておいた通りです。


報道によれば、少年は、
「参加者に声を掛けられてカッとなった」
「声をかけられてかっとなり、もみ合いになった。催涙スプレーは護身用に持っていた」

と供述しています。また、統一戦線義勇軍議長・針谷大輔氏のブログによれば、デモ参加者に追い回され、取り囲まれた末の「反撃」であるという見方もあるようです*1


どのような経緯があったにせよ、催涙ガスやスタンガンで攻撃するというのはやり過ぎであり、弁護の余地はないでしょう。仮に針谷氏のブログで述べられているような状況があった場合でも、過剰防衛のそしりは免れないのではないでしょうか。「あれがヘイトクライムだ! レイシストを通すな! 1.24緊急行動」を組織したヘイトスピーチに反対する会も、〈1.24緊急行動・直後報告〉のコメント欄で「おたくらと関係ない人間の仕業でも遺憾の意ぐらい表明した方がいいんじゃね」と指摘されている通り、何らかの見解を表明するべきだと思います*2


さて、池袋と秋葉原で昨年9月に起きた暴行事件、そして1月13日に西宮で起きた暴行事件については沈黙を保つ瀬戸弘幸桜井誠在特会会長*3も、この事件についてはさっそく大々的に取り上げました。


不可解なのは、瀬戸弘幸の次のような言い草です。

 ・・・今回の事件は起こるべくして起きた事件であると思います。その理由は「在日特権を許さない市民の会」や「主権回復を目指す会」などの運動を敵視して、これまで散々記事で攻撃してきた、そのマスメディアの煽り記事に触発されて行動を起こした少年が出て来たということに尽きます。
 マスメディアは私が参加を呼びかけてきた運動について、これを民族差別とか外国人排斥だなどと一方的な批判を浴びせ、社会から抹殺を図る動きに出ていました。
 感受性の強い高校生や若者の中に、このような誤った記事に影響受けて、今回のような跳ね上がり者が出ることは容易に想像された事でした。
 よって、今回の事件を機にマスメディアはこれまでの、我々の運動に対する一方的な誹謗・中傷を止めて、真実に基づく記事を掲載することを強く要請するものです。
 特に朝日新聞東京新聞には、今回のこの暴力事件を取り上げて、その背景並びに自分たちの報道によって、このような事件が引き起こされた点まで含めてしっかりと報道する責務があると思います。


今回の事件が「起こるべくして起きた」という点についてはおおむね同感ですが、それをマスメディアのせいにするのはお門違いというものでしょう。在特会主権回復を目指す会の行動については、京都朝鮮学校襲撃事件をひとつのきっかけとしてようやく一般紙等でも報道されるようになりましたが、問題の重大性に照らせばまだまだ足りないぐらいです。それを「散々記事で攻撃してきた」とか「煽り記事」などととらえるとは、自称ジャーナリストとは思えないほどの打たれ弱さですね。だいたい、今回事件を起こした少年が、そんな細かい記事をいちいちチェックしていたんでしょうか。


それ以前に、自分達がいったいどんな排外主義的言説をネット上で、そして街頭でばらまいてきたのか、よくよく考えてみるとよろしい。朝鮮学校の前で「お前らウンコ食っとけ、半島帰って」「スパイの子どもやないか」「キムチくさいねん」「密入国の子孫やんけ」京都弁護士会の声明から引用)などとがなりたてることのどこが民族差別・外国人排斥ではないというのか。桜井誠も、これが「批判的言論として許される範囲を越えて」いるという弁護士会の指摘に正面から反論できず、言論の自由に逃げているじゃありませんか。


在日韓国・朝鮮人や中国人を十把一絡げに犯罪者扱いし、時には「蛆虫」「ウンコ」などと罵倒し、批判者に対して暴力的な対応を繰り返してきたのが、「私〔瀬戸〕が参加を呼びかけてきた運動」の関係者です。その様子を、街頭で、あるいはネットで垂れ流されている動画を通じて目の当たりにしてきた「感受性の強い高校生や若者の中に、・・・今回のような跳ね上がり者が出ることは容易に想像された事でした」。だからといって対抗暴力が許されるわけではないのは冒頭に書いた通りですが、瀬戸は、今回の事件がなぜ「起こるべくして起きた」のか、もっとしっかり考えるべきでしょう。無理でしょうけど


ちなみに、今回の件について、まきやすともが次のように書いているのを一定程度評価する向きもあるようですが、私は必ずしも同意できません。

デモ隊は解散したので私は帰ったのだが、直後に支那人の17歳高校生が催涙スプレーを撒いた。
〔中略〕
警官に対して「逮捕しろ」とか、「何を警備しているんだ」と叫んでいるが、全ては警察頼りなんだね。
そこが保守系市民団体の特徴なんだろうか。
本来なら自分達の責任で敵と対峙しなければならない。
逮捕・逮捕の絶叫をいしているが、筋を通すならば、実行者を引き渡せ、警察は介入するなと言うべきだろう。
本人と直接向き合った上で、必要ならば法治国家の枠に則って警察に引き渡す。刑事告訴する事になる。
まあ、本当に筋論だけどネ
(まきやすともブログ〈体制依存型なのかな?〉)


一見かっこよさそうですが、実のところ、これはヤクザの論理です。不良グループ同士の小競り合いならともかく、大人の社会でこんな自力救済を認めれば、抗争が拡大するだけ。そもそも、「必要ならば法治国家の枠に則って警察に引き渡す」と書いていますが、こんな連中に実行者を引き渡したら「人民裁判」になるに決まっています。また、中野区議から刑事告訴されたまきやすともがどのように「本人と直接向き合っ」ているかを考えてみれば、とてもかっこいいなどとは感じられないでしょう。


「沿道から野次を飛ばす輩もいたが、それに対してマイクで『バカ』『キチガイ』『死ね』なんて叫んでいるようじゃぁ、もう大衆運動としては失格だね」とも書いていますが、区議の自宅前で「蛆虫」「ゴミ」などと騒ぎ、非学会員の住民から苦情を言われたら「アンタ創価学会のシンパでしょ」「創価学会の暴力やめなさい」などとやり返す人間ですから、しょせん同じ穴のムジナ。ブログでも、裁判官に対して「馬鹿」「キチガイ」を連発し、千葉さんのことも「気狂い」呼ばわりしているのですから、人のことを言えた義理ではありません。他人のことはある程度冷静に見られる人間のようですが、鏡が見れないという点では同類ですので、だまされないようにしましょう。


なお、今回のデモの参加者の中には、「ゴミはゴミ箱へ朝鮮人は朝鮮半島へ支那人は支那大陸へ」という一言メッセージがついたブログで、次のように書いている者もいました。

今日は四谷市民ホールで全国大会に参加して、11時20分ごろ外国人参政権反対デモがスタートしました、デモの最中に外国人でって行け、身分の低い外国人に参政権は要らないと叫んだら後ろにいた若い女性にあんたが言ってるのは外国人に対する差別で排外主義的など言われました(外国人差別して何所がいけないのか、外国人は差別されて当然、区別されて当然、制限されて当然です、外国人は差別が嫌だったら日本から出って行けばいいし、外国人に人権などありません。)
モナー号@在特会材特会〔ママ〕全国大会in外国人参政権反対デモ〉)


対象は違いますが、矢野穂積朝木直子両「市議」が性風俗従事者に対して言っていたこととそっくりですね。

 「売春」は日本では法律が禁止していますから、「禁止」対象そのものをいくら「職業」と呼んだところで、違法であることにはかわりがなく、存在自体が許されていません。「何人も売春をしてはならない」とされる違法行為は、存在を否定されたとしても、また差別されたとしても、許されない違法行為ですから当然の帰結です。また、実質売春のソープを含む「特殊性風俗」は反社会的「有害業務」であり、求人目的での宣伝行為は違法、処罰対象です。(最高刑は懲役10年)
 これは「SEX WORK」を、本人の同意のあるなしに関係なく、禁止し否定している国際条約である「人身売買議定書」でも明らかです。
 批判されたり、存在が否定されたり、差別されるのがいやなら、その「特殊性風俗=売春類似業を」やめればいいだけの話です。
東村山市民新聞〈「『職業』差別論」の破綻(総括)〉、太字は引用者=3羽の雀)


外国人参政権には賛成の矢野・朝木両「市議」ですが、差別主義者の言説というのはよく似てくるものです。

*1:【追記】室岡徹郎【怒文・雑文】〈1・24を振り返る。〉、清風匝地〈ちっちぇー〉も参照。

*2:【追記】(1月26日)ヘイトスピーチに反対する会による「緊急声明」が発表されましたが、私はまったく共感できません。緊急行動の呼びかけでは「意見の相違を暴力で解決し、それを正当化してきたグループの参加を認めません」と書いていたのですから、せめてその原則をあらためて表明するぐらいのことができないのでしょうか。/【さらに追記】左派からの見解表明として、ブログ旗旗〈「在特会」ごときと「刺し違える」ような値打ちなどない〉も参照。

*3:2009年9月30日付〈依然として集団暴行事件にダンマリを決め込む瀬戸サンらが4月ごろに言っていたこと〉も参照。