無知とウソで塗り固めた「在特会」反論書面(1):「子供に向けられたものでない」などという見苦しい言い訳【追記あり】


国連人種差別撤廃委員会の委員からも在特会のような団体が合法的に活動しているというのは本当なのかと驚かれたらしい国辱的レイシスト団体・在特会在日特権を許さない市民の会)が、同委員会に対する反論書面を公にしました。馬鹿馬鹿しいとは思いますが、いちおう何回かに分けてつっこんでおくことにします。



国連人種差別撤廃委員会の勧告については、次の記事を参照。なお、3月20日付〈[http://d.hatena.ne.jp/three_sparrows/20100320/p1:title=国連広報センターはレイシスト団体「在特会」に情報提供の枠を超えた便宜供与を行なうべきではない]〉で指摘した通り、国連広報センターが在特会に代わってこの反論書面を委員会に送付するなどという「特権」的取扱いをするなら*1、これは大きな問題になるでしょう。


それでは在特会の言い分に順次つっこみを入れていきます。冒頭、GHQによる占領期間中の朝鮮学校閉鎖命令について言及している箇所がありますが、これについては別途触れるとして、その次の段落から。

また、委員会は朝鮮学校に関する議論を行う際に、著作権者たる在特会が撮影した映像を許可無く使用しました。ここに私は在特会の著作権を侵害するものとして訴え、今すぐにその放映とその放映に基づく全ての結論を撤回するように勧告いたします。


前掲3月20日付エントリーで指摘した通り、朝鮮学校側は襲撃の模様を自ら撮影して英語字幕付で公開しています。



委員会が見たのはまず間違いなくこの動画(またはその短縮版)でしょう(追記〔4月18日〕:確認されました)。また、仮に在特会側の映像が使用されたとして、パソコンをモニターに接続して You Tube の画像を見てもらったとすれば、やはり著作権の問題は生じません。


したがって、「著作権者たる在特会が撮影した映像を許可無く使用しました」というのは、NGO側が明らかな著作権侵害を行なったという証拠を示さない限り、単なる言いがかりです。言いがかりに基づいて「今すぐにその放映とその放映に基づく全ての結論を撤回するように勧告いたします」などと大見栄を切るとは、何と恥ずかしいことでしょう。見られて都合が悪い動画なら、最初からアップしなければよろしいのです。


次に行きます。

委員会は報告書の中で朝鮮学校問題に関して二つの言及を行っています。言及の一つは「朝鮮学校に通学する子供を含む特定の団体への直接的かつ露骨な言動の継続的な発生」でしたが、おそらくこれは在特会会員による京都朝鮮学校に対する抗議活動(2009年12月4日)が基になっているのでしょう。本抗議活動は朝鮮学校とその職員に対してなされたものであり、断じてその子供に向けられたものでない事を申し上げておきます。


「本抗議活動は朝鮮学校とその職員に対してなされたものであり、断じてその子供に向けられたものでない事を申し上げておきます」だってさ、よく言うよ。


朝鮮学校襲撃が行なわれたのは12月4日(金)午後1時ごろであり、校内に児童がいることは当然に予想できたはずです。その状況下で
「朝鮮学校、こんなものは学校ではない」
「こらあ、朝鮮部落、出ろ」
「お前らウンコ食っとけ、半島帰って」
「スパイの子どもやないか」
「朝鮮学校を日本から叩き出せ」
「北朝鮮に帰ってくださいよ」
「キムチくさいねん」
「密入国の子孫やんけ」

などという罵声をさんざん浴びせておいて、「子供に向けられたものでない」などという言い草が通用するはずはないでしょう。実際にも、襲撃が行なわれたときに子供達は校内におり、そのことは2009年12月18日付東京新聞でも次のように報じられました

 騒ぎがあった四日は、同校で京都市内と滋賀県内の初級学校計四校の四〜六年生約百三十人が交流会を開いていた。同校によると、低学年の子たちは昼食を終えて歯磨き中。マイクの大音響に数人の子どもたちが怖がって泣きだしたという。騒ぎの間、児童らは講堂や校舎にこもったままで、下校できなかった。


どうやら子供達に向かって上記のような罵声を浴びせたことについては正当化のしようがないと自覚しているようですが、であれば、このような報道が行なわれた時点で、少なくとも子供達を脅かしたことは不適切だったと認めて遺憾の意でも表明すればよかったのです。しかし、京都弁護士会の会長声明(2010年1月19日)に対する反論でも、この点については何ら触れられていません。国際的に問題にされてからあわてて弁明しても、いまさら遅い。


それ以前に、在特会が平気で子供を標的にする集団であることは、2009年4月11日のカルデロン一家追放要求デモでとっくに明らかになっています。日刊ベリタでも報じられた通り、在特会は
「デモ行進のコースですけれども、カルデロン・ノリコが通っておりました、蕨市立南小学校、そして現在通っております、蕨市立第一中学校の横を掠めるコースを設定いたしました」
として、当時13歳の少女をあえて的にかけるコースを設定しました。そして、彼女の名前を何度も口にしながら蕨市立第一中学校の学区内を集中的に練り歩いたのです。

 デモ行進中、一団は「不法滞在外国人を叩き出せ!」「法の捻じ曲げを許さないぞ!」「ノリコ・カルデロンの在留を認めないぞ!」「ノリコ・カルデロンの在留を許さないぞ!」とカルデロン一家を名指ししたシュプレヒコールをあげた。その声は半径300m程に響き渡っていた。
〔中略〕
 デモコースに設定された蕨市中央、南町は、ノリコさんの通う蕨第一中学校の学区内である。南町はすべての丁目が蕨第一中学校の学区だ。デモの一団は14:20頃、その南町に到着し、15:00頃に至るまでそこを練り歩いている。デモ行進は予定時間の1時間の殆どをこの地区に集中したのである。
 デモの一団はノリコさんの通う蕨第一中学校を前にして、「カルデロン一家を直ちにフィリピンに戻せ!」「不法滞在者、不法就労のカルデロン一家を、直ちに日本から、追放するぞ!」とシュプレヒコールをあげた。なお、ノリコさんはこの日、音楽部のため学校内に居たという。
(日刊ベリタ〈「在特会」ら、ノリコさんが通う中学前でデモ行進 「カルデロン一家を日本から追放しろ!」〉、注は省略)


小学校・中学校前の模様をピックアップした動画も参照(追記:在特会はまた蕨市でデモをやろうとしています。文末追記参照)。こんなことを堂々とやっておいて、いまさら朝鮮学校襲撃事件について「断じてその子供に向けられたものでない」などと弁明するのは、見苦しいにもほどがあります。


さて、在特会は次にアパルトヘイトを持ち出して自分達の蛮行を正当化するという暴挙に出ていますが、これについても別のエントリーで触れるとして、段落を2つ飛ばします。

朝鮮学校側が半世紀にわたって不法占拠し続けてきた勧進橋児童公園には、公園の中にあってはならない危険な物がありました。ゴールポスト、朝礼台、違法配線を伴うスピーカーなどが該当します。ゴールポストや朝礼台が倒れてその公園を利用する朝鮮学校の児童を含む子供たちが怪我をする可能性があり、また、違法配線による漏電が原因でその公園を利用する朝鮮学校の児童を含む子供達が感電する可能性がありました。在特会は児童の権利に関する条約第三条第一項に基づき、児童の最善の利益を考慮してそれら危険物の撤去を実施したまでです。そして、その危険物を片付けるように持ち主である朝鮮学校に要請しました。在特会の行動は何ら問題が無い事は明らかです。委員会は児童公園を不法占拠し、危険性を放置してきた朝鮮学校の問題の方こそ取り上げて議論すべきです。


法治主義下の日本で自力救済/私力の行使が基本的に禁じられていることは、2009年12月18日付〈子どもたちを脅かして恥じない「行動する保守」と、そんな連中と手を組み続けるりんごっこ保育園理事・監事〉および同12月19日付〈子どもたちを脅かしたお仲間の行動について言い訳タラタラの瀬戸弘幸サン〉で指摘した通り。


在特会側は、朝鮮学校側が刑事告訴をするという報を受けて意趣返しのように朝鮮学校側を都市公園法違反容疑で告発しましたが、最初からそうしておけば、ここまで批判されることはなかったでしょう。また、仮に「不法占拠」が事実であったとしても、
「朝鮮学校、こんなものは学校ではない」
「こらあ、朝鮮部落、出ろ」
「お前らウンコ食っとけ、半島帰って」
「スパイの子どもやないか」
「朝鮮学校を日本から叩き出せ」
「北朝鮮に帰ってくださいよ」
「キムチくさいねん」
「密入国の子孫やんけ」

などという罵声を浴びせる行為は、「要請」などと呼べるものではありません。さらに、会長自身、朝鮮学校を日本から一日も早く消滅させることを在特会の優先事項に掲げている以上、「不法占拠」云々が、人種主義的・排外主義的思想を背景として朝鮮学校を攻撃するための口実に過ぎなかったことは明らかです。



次に、在特会は、自分達に向けられた暴力が朝鮮学校関係者によるものであるかのような根拠のない宣伝をし、被害者面をします。

委員会は在特会等の活動が集団的暴力に発展する事を心配しているのではないかと拝察しますが、実態は全く逆で、朝鮮学校の支援者から組織的に実際の暴力を受けているのは我々在特会の方です。事実、私達は言論活動を暴力で妨害され(2009年4月11日)、更には爆発物を投げ込まれて怪我人を出しております(2009年6月13日)。貴殿等が偏向した情報を基に勧告を出す度に、委員会の権威を利用した暴力が増長され、言論の自由が失われていきます。委員会は勧告が悪用されている現実を確認する必要があります。


2009年4月11日の件は、瀬戸弘幸ブログ〈カルデロン一家支援組織の正体:暴力を是認するならず者集団〉や桜井誠ブログ〈【報告】犯罪外国人・犯罪助長メディアを許さない国民大行進 in 蕨市〉で取り上げられている事件です。いずれも「反日極左分子」「極左活動家」などとするばかりで、「朝鮮学校の支援者」とは一言も書いていません。


2009年6月13日の件は、「6・13外国人参政権断固反対!京都デモ」の最中に爆竹のようなものが投げ込まれた事件です(こちらの動画の6分50秒あたりから)。桜井会長は、この件について次のように報告しています。

こうした妨害行為はデモ行進の最中も執拗に行われました。特にひどかったのが四条河原町交差点をデモ隊が通過しようとしたときに、左翼テロリストたちがデモ隊に向かって火薬物を投げ入れたことでした。これは一歩間違えれば参加者が大けがを負った可能性があり、自分たちの主張と違うものは例え危害を加えてでもその言論を封殺し、民主主義を否定するという許しがたい犯罪左翼の恐ろしい本性が見えてきたのではないでしょうか? なお、この件に関しては京都府警の所轄署と相談の上、威力業務妨害・傷害未遂など可能な限りの刑法を適用して刑事告訴するように在特会関西支部に対し会長として指示を出しています。
(桜井誠ブログ〈在特会京都遠征の活動報告(6月13日編)〉、太字は引用者=3羽の雀)


この書き方からして実際には怪我人が出なかったことは明らかであり、国連人種差別撤廃委員会に対する反論書面で「爆発物を投げ込まれて怪我人を出しております」と述べているのは、自分達が被害者面をするための虚偽宣伝と言えるでしょう。また、このエントリーでも桜井会長は「犯罪暴力左翼」などと書くばかりで、彼らが朝鮮学校とつながっている可能性については一言も触れていません。刑事告訴が実際に行なわれたのかどうかも不明です。


したがって、「朝鮮学校の支援者から組織的に実際の暴力を受けているのは我々在特会の方です」などと書き、あたかも朝鮮学校関係者がこれらの暴力行為に関与していたかのような印象を振りまくのは、悪質なフレームアップと言うべきです。「東アジア反日武装戦線『雷』」を名乗る者による「殺害予告」(2009年12月7日着)についても、刑事告訴したのかどうかの報告もないまま「在日朝鮮人」によるものという宣伝を行ない続けていますが、これこそ在特会らがレイシスト団体であることの証明です。


もちろん、「在特会等の活動が集団的暴力に発展する」事態はすでに起きており(2009年9月28日付〈矢野・朝木両「市議」が東村山市に呼び込んだ連中の暴力的自警団体質〉など参照)、今後それがエスカレートしていく可能性は十分にあります。委員会がこのような事態に懸念を表明するのは当然であり、日本政府も、差別的な言葉や嫌がらせ行為は看過しえない」「きちんと対応していくという岡田克也外相の言葉通り、しかるべき対応をとることが求められます。


反論書面ではこのあと朝鮮学校無償化問題等について触れていますが、これについても稿を改めるとして、最後にこの文書の差出人を見ておきましょう。


2010年4月1日(木)
在日特権を許さない市民の会
書面作成責任者 八木康洋(在特会副会長)


普通、これだけ重要な文書は、文書を誰が作成したかに関わらず会長名で出すものでしょう。どんな事情があるのか知りませんが、これでは文書を受け取った委員会の方も、けっきょくどうでもいい文書だとしか見てくれないんじゃないですか。


〔この記事は4月5日の夜にアップしたものです。〕


【追記】(4月7日)
下記の通り、在特会は再び蕨市で「4・11 外国人犯罪撲滅デモ in 蕨市」を行なおうとしています。これに対する批判等は次のブログを参照。



*1:【追記】(4月6日)その「特権」的取扱いが行なわれたようです。人権NGOは、在特会の反論書面に対する再反論等を国連広報センター経由で送るよう求めてみてもよろしいのではないでしょうか。