子どもを徹底的に追い込もうとする、情けなさ丸出しの「主権回復を目指す会」【資料追加】


東村山市民新聞の1月29日付更新(2010/01/28 16:14:30)は、例の扇情的な検察批判に些細な加筆があった程度ですので、昨日付の更新報告に反映させておきました(追記:1月30日付更新〔2010/01/29 20:18:41〕は「最終更新日」の修正のみ)。


りゅうさんのコメントを承認せず、敗訴から目をそらすようにコピペ主体の記事をアップし続けるクロダイくんが、敗訴翌日に日護会へのカンパを募り出したのも笑えますが、みんな笑ってますからほっときます。判決書もそろそろ届いているのではないかと思いますが、せめて「判決を見てからコメントします」ぐらい言っときゃいいのに。なお、例の「事実を淡々と掲載」(笑)した記事については、あらためてゆっくりつっこみを入れる予定です。


さて、P2Cさんがさっそく〈本当に子供と戦う「主権回復を目指す会」の人々〉として取り上げていますが、主権回復を目指す会の連中が、催涙スプレー噴射事件の少年が通う学校に「退学を含めた厳重処分を要求」する目的で押しかけ、進学予定の学校に対する「入学の是非についての交渉」までほのめかしていることがわかりました。kwoutしようかとも思ったのですが、P2Cさんにならい、一部を伏字にして引用します。

主権回復を目指す会は26日、実行犯の「D・S」〔ここの伏字は原文ママ*1の通っているY学校とへ退学を含めた厳重処分を要求しに赴いた。
対応したM理事長、S校長並びに担任のN正之教諭は被害者と我々に、学校としての謝罪と丁重なお見舞いの言葉を述べ、その対応は真摯な姿勢に貫かれていた。
当会としての最低条件は、被害者へ金銭を含めた全面謝罪と「二度と反日に加担しない」という詫び状の提出である。学校側はこれに対し、可及的速やかにこれを検討すると確約した。従って、犯人の高校生の進学先へ、入学の是非についての交渉はそれまで控えることにする。
なお、この犯人は48時間でもって釈放されている。また母親は日本語が片言しか話せず、親子共々国籍は日本かシナか不明とのことである。
主権回復を目指す会掲示板における主権回復を目指す会事務局の投稿〔2010/01/28 22:23〕)


P2Cさんも指摘するように、「やり方によっては恐喝罪や暴力行為等処罰法違反に問われかねない」行為ですね。小学生の学びの場を潰そうとする連中らしいやり口ですが、家庭裁判所による審判の結果も待たずに、少年の教育の機会を奪い、進学・就労の機会を狭めようとする行為に出るとは、私もさすがに予想しませんでした。在特会の大久保王一氏は、少年に同行していた大人達に対し、
今回の襲撃事件で一番頭にくるのは、まだ未来のある少年達を鉄砲玉として使い、未来を奪った事
と憤っていますが、主権回復を目指す会は少年の未来をさらに奪おうとしているわけです。どこに追い込もうとしてるんだよ。


加害者に対して慰謝料や謝罪文を要求するのは正当な権利ですが、それは、少年に代理人がついているなら代理人を通じて、ついていないなら家庭裁判所調査官等を通じて、本人および保護者に対して行なうべきものです。もっとも、「『二度と反日に加担しない』という詫び状の提出」などという要求は、思想・良心・宗教の自由を不当に制約しようとするものであって、正当な要求の限度を超えていると思いますが。


それで納得がいく対応が得られないのなら、家庭裁判所における審判(刑事裁判所に移送される可能性もある)の推移も見つつ、民事裁判で損害賠償を請求するしかない。そうすれば、少年の行為が一方的な傷害だったのか、過剰防衛として情状酌量の余地もある行為だったのか(個人的には、現段階では正当防衛と見なす余地はないのではないかと思います)という点をはじめ、司法による事実認定と法的判断が行なわれることになります。


「正真正銘の被害者」産経新聞に対する抗議街宣の告知より)というなら、堂々と司法による判断を仰げばよい。実力行使合戦がエスカレートしないようにするためにも、むしろ本件については司法判断を仰いだ方がいいと、私は思います。それができないのに学校や個人宅に押しかけるのは言語道断です。


なお、主権回復を目指す会の報告によれば、「この犯人〔容疑者の少年〕は48時間でもって釈放されている」とのことです。証拠隠滅や逃亡のおそれはないと判断され、在宅のまま手続きを進めることになったのではないでしょうか。


この点について室岡徹郎氏は、
「少年は無罪放免。次の日にはパトカーでザイトクカイの報復を恐れ保護されながら帰りました」
と報告し、コメント欄でも「少年は不起訴です」と書いています。しかし、とても額面通りには受け取れません。


明らかに犯罪の嫌疑がない場合は別ですが、今回のように少年が傷害容疑で逮捕された以上、捜査を遂げた段階で事件は家庭裁判所に送られるはずです。その後、家庭裁判所調査官による調査を経た上で、審判不開始、不処分、保護処分、検察官送致(刑事裁判手続きへの移送)等の決定が行なわれることになります(とりあえず神奈川県警〈少年事件手続の流れ〉参照)。したがって、現段階で「不起訴」とか「無罪放免」と断言するのは、無責任な宣伝としか考えにくい。


室岡氏は、「これから少年らに慰謝料の請求がされると思います。/提案ですが、寄付を募ったらどうでしょうか?」というコメントに対しても、
「できないです。/障害〔ママ〕が無罪放免だから。/なぜそんなことを知っているかというと、実体験で経験しているからです」
とコメントを返していますが、成人と少年では上記のように手続きが異なりますので、この「実体験」も当てにはなりません。もちろん、主権回復を目指す会側が司法判断を回避するために慰謝料の請求を行なわない可能性はありますが、法的に「できない」と断言するのはやはり無責任です。まったく、どっちもどっちで勘弁してほしいという感じですよ。


なお、刑法には証人等威迫罪という罪名もありますので(第105条の2)、主権回復を目指す会およびその関係者の方々はくれぐれも注意した方がよろしいでしょう。少年が通う学校の関係者も、ここでいう「刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者」と見なされる可能性もあると思いますよ。


「自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処せられる」


もちろん、まきやすとももよくよく注意するべきです。それがわかったから区議の自宅前における街宣をやめたのかもしれませんが。


また、「行動する保守」だか「行動する運動」だかを名乗る連中がこれまでにたびたび子どもたちを脅かしてきたことについては、以下の記事を参照。


学習塾襲撃事件については凪論の以下の連載も参照。


【資料1】少年法の趣旨に反し、容疑者である少年の実名と学校名が大書されたプラカードを掲げる主権回復を目指す会関係者(産経新聞抗議街宣、1月29日
*写真は関係者のひとりがブログに掲載したものだが、あえて出典は伏せる。




【資料2】少年法を無視し、容疑者である少年の実名を繰り返し掲載する主権回復を目指す会(活動報告より)
*例によって、出典はあえて伏せる。また、写真に写っている人物は誰が誰やらわからないので、念のため全体にぼかしをかけた。


*1:【追記】(1月31日)主権回復を目指す会が1月29日に実施した産経新聞抗議街宣で、参加者のひとりは容疑者の少年の実名と学校名を大書したプラカードを掲げていた。文末資料参照。